記事登録
2008年10月30日(木) 00時28分

消費支出は期待薄 経済対策の目玉「給付金方式」産経新聞

 追加経済対策の目玉として検討されていた定額減税が「給付金方式」に変更されることになった。高齢者なども給付の対象となり、全世帯に配布される見通しで、平成11年に実施された「地域振興券」が思いだされる。だが、給付を受けた人すべてが現金を消費に回すわけではないだけに、財政に負担が大きい割に効果は薄いとの見方が強い。

 仮に2兆円の定額減税が給付金方式となった場合、全世帯に一律配布すると、1世帯当たりの給付金額は3万8000円余りになる計算だ。国民1人当たりでは約1万5000円。具体的な給付方法などは今後の議論となる。

 当初の定額減税の議論では10年に行われた定額減税が想定され、勤労者世帯4人家族で年間6万5000円程度の減税が期待されていた。だが、減税の恩恵を受けられない低所得者向けの給付も2兆円に含めたことで、勤労者世帯の給付金は当初想定された減税規模よりも少なくなることが確実になった。

 一方、みずほ総合研究所の試算では、給付金によって収入が増えたとしても、その分を消費に充てる割合は6割強に過ぎず、4割は貯蓄に振り分けるという。ニッセイ基礎研究所の斎藤太郎主任研究員も、「消費に回るのは2〜3割程度しかない」と分析する。

 低所得者の方が消費に使う割合が高い分、経済効果は高まるが、食料品など日常の買い物に使われるだけであれば、個人消費を刺激する効果は限られる。振興券は使用できる期間を半年間に限定したが、今回も何らかの形で消費を促す方法が求められそうだ。

 振興券は、15歳以下の児童がいる世帯主や老齢福祉年金などの受給者といった一定の条件を満たした国民が対象だった。対象者1人当たり2万円の振興券が交付され、書留などで各世帯に郵送する自治体が多かった。当初は国民1人に3万円、総額4兆円の商品券を配るというアイデアだったが、総額は7000億円に抑えられた。

 それでも商品券をめぐる商戦が活発になり、経済企画庁(当時)は名目成長率を0・1%押し上げる効果があると試算していた。だが結局、地域振興券は「7000億円の国会対策費」「天下の大愚策」など散々な批判を浴びた。

 今回の事業規模は2兆円と振興券の3倍近くに及ぶ。だが、期待される消費刺激効果が限定的となれば、公共事業や大減税で、国の財政が悪化した当時の二の舞になる可能性が一段と高くなる。

【関連記事】
「追加経済対策」首相30日に発表 給付金方式の所得上限設けず
選挙前税金バラマキ…麻生2兆円家計支援、実効疑問
追加経済対策「現金・クーポンを直接配布」で合意、所得制限なし 政府・与党
「どんな困難があっても解散せず」 首相11月上旬に決断 経済対策へ
消費税増税含む中期プログラム 道筋どこまで

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081030-00000503-san-bus_all