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2008年10月29日(水) 10時41分

<選挙>衆院選先送り 民主、対決姿勢強め 給油延長法案など、審議の難航は必至毎日新聞

 ◇給油延長法案・金融強化法案、審議の難航は必至

 麻生太郎首相が年内の衆院選を見送る方針を固めたのは、世界的な金融危機が国内経済にも波及し、当面、経済対策を優先した政権運営をせざるをえなくなったためだ。しかし早期解散を求めてきた民主党が今後、対決姿勢を強め、国会審議が難航するのは必至のうえ、早期解散をにらんできた与党内にも首相への失望感がくすぶる。株価低迷と併せ、政権を取り巻く環境は厳しさを増している。

 首相は27日の自民党役員会で、日本経済の現状について「米国の金融証券関係の底が見えない限り、各国が引きずられていくような状況だ」と強い危機感を表明。今後の対応について「政治主導で、今までの行政の枠を超えたタイミング、スピード感を持ってやることが大切だ」と述べ、週内に市場安定化策を取りまとめるよう指示した。

 政府・与党の緊急対策が、景気後退局面にどこまで奏功するかは未知数。会社経営の経験を持つ首相は「政局より政策」と景気対策を強調してきただけに、今後の景気動向と政権の浮沈は重なる。首相は27日夜、記者団に対し、金融機能強化法改正案について「民主党案、政府・与党案で一番いい案をつくればいい」と述べ、与野党の修正協議にも期待感を表明した。

 ただ、民主党は27日、インド洋の給油活動を延長する新テロ対策特別措置法改正案を巡り、28日の参院外交防衛委員会での採決を拒否。与党が目指した月内成立は一転、不透明になりつつある。安住淳国対委員長代理は「解散先送りなら、あらゆる力を行使して対決する。首相の問責決議案提出も考える」と対決姿勢を強調した。

 首相の足元である与党内にも、選挙先送りへの不満がくすぶる。自民党の中川秀直元幹事長は27日、茨城県日立市で講演し「(早期に民意を問わないと)民主党が再び政局主義になり、国会が荒れる。麻生内閣も安倍晋三元首相や福田康夫前首相と同じ目に遭うのではないか」と述べた。与党内には、野党の抵抗で国会審議が行き詰まった場合、「対立軸がはっきりした」として、首相が年内の衆院解散・総選挙に打って出る可能性を指摘する声もある。

 解散時期をあいまいにしてきた首相の国会戦略は、与党内に先送り論と早期解散論の対立を招き、双方に感情的なしこりも残した。公明党幹部は27日夜、「先延ばししても、選挙に勝てるわけがない。首相は思い上がりもいいところだ」と不満を示しており、政権運営の火種になる可能性もある。【中村篤志、田中成之】

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081029-00000004-maiall-pol