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2008年10月29日(水) 11時12分

「糖尿病」診断されたら眼科検診を 合併症の一つ、網膜症に注意産経新聞

 ■自覚症状なく進行/重篤化すると失明も

 日本の中途失明原因の第2位で、年間約3000人がこの疾患で失明しているともいわれる「糖尿病網膜症」。しかし、発症するのは、糖尿病になって5年から10年後。しかも重症化するまで自覚症状がないため、気づいたときは手遅れというケースも少なくないという。今年度から始まった“メタボ健診”は、糖尿病など生活習慣病の早期発見を目指す。糖尿病と診断されたら、年1回は眼科の検診を受けたい。(服部素子)

  ■表でチェック■ 糖尿病と言われたら?

 糖尿病網膜症は、糖尿病特有の三大合併症の一つ。網膜は、瞳から入った光の明暗や色を感知する組織で、細かい血管が密集している。そのため、高血糖状態が続くと血管の閉塞(へいそく)障害と血液凝固異常が起き、眼内の血管が徐々に詰まって、網膜に栄養や酸素が届かなくなる。

 「そうなると、網膜に新しい血管が生まれ、酸素不足などを補おうとします。しかし、この新生血管はもろく、少しの刺激でも出血し、重篤化すると網膜剥離(はくり)を起こし、失明に至ります」と天理よろづ相談所病院(奈良県天理市)の石郷岡均(いしごうおか・ひとし)眼科部長。

 糖尿病網膜症の進行度合いは、「単純網膜症」「増殖前網膜症」「増殖網膜症」の大きく3段階に分けられる。

 最初の変化は、点状出血や毛細血管瘤(りゅう)などの症状。この時点で血糖をコントロールできれば、失明には進まず、進行をとめることができる。ただ、自覚症状がないため、眼科での定期検診を受けていなければ気づかない。

 増殖前網膜症になると、血管閉塞が進み、静脈異常などの症状が現れる。この段階でも自覚症状はほとんどないが、眼科では網膜症の進行を防止するため、網膜レーザー光凝固術を行い、血管新生の発生を抑制する処置を取る。

 第3段階の増殖網膜症まで進むと、網膜に接している硝子(しょうし)体の中にまで新生血管が伸び、硝子体出血や牽引(けんいん)性網膜剥離が起き、急激な視力低下や飛蚊(ひぶん)症が現れる。

 つまり、ここまで進行しないと患者自身が気づかないところに、糖尿病網膜症の怖さがある。眼科では、網膜に癒着した増殖組織をはがす硝子体手術を行い、失明の防止や視力の回復を目指すことになる。

 「近年の手術技術の進歩で、硝子体手術の成功率はあがっています。ただ、一度視力が悪くなると、運転免許が保持できる矯正視力0・7まで戻すことは容易ではありません。また、手術が成功しても、高血糖の状態が改善されない限り、網膜症は悪化します」と、石郷岡部長。

 厚生労働省の平成14年度糖尿病実態調査によると、「糖尿病が強く疑われる人」は約740万人。「糖尿病の可能性を否定できない人」と合わせると約1620万人で、日本人の8人に1人が糖尿病患者か糖尿病予備軍という計算になる。しかし、このうち糖尿病で医療機関を受診している人は約半数。しかも、その約3割は眼科を受診していない。

 今年度から、40〜74歳を対象にした特定健診・保健指導が義務化され、糖尿病と診断を受ける人の増加も予想される。石郷岡部長は「内科と眼科が連携して血糖コントロールをし、糖尿病網膜症の重篤化をいかに防ぐかが今後の課題。増殖前期までに治療できれば視力の維持は可能です。糖尿病といわれたら、必ず眼科で定期検診を受けてほしい」と強調した。

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