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2008年10月29日(水) 09時26分

ユーザーに暗黙の管理負担を強いるPCの使い方を変える——マイクロソフトITmediaエンタープライズ

 「大企業向けにPCを提供する方法が大きく変わる」

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 Microsoft日本法人のビジネスWindows本部、東條英俊氏は話す。OSとアプリケーションを個別にインストールしたPCを従業員の数だけ購入する、というこれまでの方法をマイクロソフトは根本的に変える。

 キーワードは仮想PC。アプリケーション仮想化ソフト「Windows Server 2008 Virtualization(App-V)」を利用し、システム管理者はユーザーの「空のPC」にExcelやPoerwPointなどさまざまなアプリケーションをストリーミング配信する。配信を受けると、PCにはOSとは独立した仮想実行環境が確保され、そこでアプリケーションが動作する。ネットワークにつながっていなくてもPC側に仮想環境が残るため、アプリケーションが使える。ここが、同社が従来提供してきたシンクライアント、ターミナルサービスとの違いだ。

 仮想PCの場合、DLLやレジストリ、.iniファイルなどOSへの変更は発生しない。通常のPCのアプリケーションは、インストールの際にDLLなどOS側の設定を上書きするため、アプリケーションとOSが結合してしまう。結果として、Excel 2003とExcel 2007を同じPCで動作すると不具合を起こすなど、アプリケーションが競合するなどのさまざま問題が発生する。

 野村證券が実際にこのシステムを早期ユーザーとして導入した。同社は、App-V導入により1台のPCで複数版のOfficeを同時に利用できるようにした。管理面でも、例えば「11月だけExcelを使いたい」などユーザーがアプリケーションを使用する期間だけ管理者がPCにストリーミング配信できるため、コストを抑えた利用も可能という。

 マイクロソフトは今後、大企業のクライアント管理手法としてApp-Vの利用を強く勧めていく考えだという。管理側にApp-Vを置くことで、従来型のPC、ターミナルサービス用の端末、仮想PC用の端末のいずれに対しても、アプリケーションの仮想パッケージを配信できる。従来型PCの欠点「エンドユーザーが暗黙の管理負担を強いられる」(東條氏)といった状況を改善し、管理者は会社全体のクライアント環境をApp-Vによって一元的に制御できるのが利点だ。セキュリティの確保や内部統制強化に取り組む上でも都合の良い環境をつくれる。

 システムインテグレーターの伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)は10月、マイクロソフトのアプリケーション仮想化技術を活用して、PC活用の利便性とセキュリティを強化すると発表した。

 CTCが提供するのはクライアント向けサービス「Trusted Desk Engine」。ICカードを使った社員証、認証基盤システム、仮想PCやシンクライアントなどを活用して、企業に新たなクライアント環境を提供しようとするもの。同社プロダクトマーケティング室、ソフトウェアソリューション推進部の部長補佐を務める井出貴臣氏は「Trusted Desk Engineの提供メニューにApp-Vを加えることで、システム管理者の負担を減らせることに着目した」と話す。

 こうした仮想環境の問題点は従来のシンクライアントと同様という。システム全体が社内LANなどネットワークに依存する点である。どのクライアントも、動作にあたりネットワーク経由でアプリケーション配信を受ける。そのため、ネットワークに障害があれば、多くのユーザーが業務を遂行できなくなってしまう。非常に大きな潜在的なリスクだ。この点については、ネットワークの冗長化などの施策が求められるが「社内LANを二重化している例はあまりない」(CTCの井出氏)という。

 二重化には一定の投資額が必要になってしまう。場合によっては「有線LANと無線LANを完全に分けて構築することで、ネットワークに単一障害点をつくらないようにすることも選択肢になる」(同氏)としている。

 仮想PCやシンクライアントなどの利便性がこれまで以上に向上すれば、管理性の高さなどをユーザー企業が評価することで、企業におけるPC環境が急速に変化する可能性も秘めている。

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