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2008年10月29日(水) 03時11分

解散風止まり、国会再び視界不良 民主戦闘モードで新テロ法案採決拒否産経新聞

 麻生太郎首相が衆院解散・総選挙を先送りする意向を固めたことを受け、民主党は28日、これまでの協調姿勢から戦闘モードにギアチェンジした。参院外交防衛委員会は、海上自衛隊のインド洋での補給活動を1年間延長する新テロ対策特別措置法改正案の採決を拒絶、法案の月内成立は困難となった。金融不安を払拭(ふつしょく)するための金融機能強化法改正案も審議入りしたが、成立のメドは立っていない。民主党はねじれ国会をフル活用した徹底的な揺さぶりで解散圧力を強めるとみられ、国会は一寸先も見えない濃霧に突入した。(大谷次郎)

 「この委員会の出席者でバグダッドを訪れ、派遣部隊を激励したのは私と麻生首相だけだ。実態が分からなければ政策の変更もできないではないか」

 28日の参院外交防衛委員会で質疑に立った元陸自イラク派遣部隊初代隊長の佐藤正久氏(自民)の一言が野党側に審議引き延ばしの口実を作った。

 審議終了後の理事懇談会で野党理事は「現場を知らないと言うのなら派遣中の自衛官の参考人招致を求める」と猛反発。もしインド洋から参考人を呼び戻すことになれば、早くても約1週間後、海路での帰国ならば約3週間はかかる。与党理事は「意地でも採決させない腹づもりだ」とため息をついた。

 民主党はもともと、「31日解散」を前提に特措法改正案を29日の参院本会議で否決し、31日に衆院再議決する方針で与党と合意していた。ところが、与党が解散先送りに動き出したことに態度を硬化。「力で倒すという対決姿勢に切り替える」(安住淳国対委員長代理)と方針転換した。

 民主党の山岡賢次国対委員長は28日の代議士会で「われわれは方針転換も戦術転換もしていない。原則は参院に任せている」と述べたが、与党側の狼狽(ろうばい)ぶりにまんざらでもない様子。記者団に「政府・与党は頼りにならないということが株価に表れている。本格政権で根本治療をしないと(市場から)信用されない」と語り、婉曲(えんきょく)に解散を迫った。

 衆院でも民主党の抗戦モードは急速に高まりつつある。28日午後の衆院本会議で質問に立った中川正春氏は「市場は首相を完全に見切った。内閣不信任だ。現状の閉塞(へいそく)感を脱するには解散・総選挙で政権と政策の是非を国民に問うべきだ」とぶちあげた。

 しかし、徹底抗戦は民主党にとっても「もろ刃の剣」だ。金融強化法案の審議をいたずらに引き延ばせば、米国の金融安定化法案のように株価のさらなる暴落を招き、国民の批判を浴びかねない。新テロ法案も審議を引き延ばせば、憲法59条の「60日みなし否決」規程が適用できる12月下旬まで解散を先送りする口実を与党に与えることになる。自民党の鈴木政二参院国対委員長が28日午後、民主党の簗瀬進参院国対委員長と会談した際、「あとは現場に任せましょう」とあっさり引き下がったのはこのためだ。

 だが、国会の混乱がさらなる市場混乱を招き、それを口実に参院で問責決議を可決されれば、首相は国民に信を問う決断を迫られる可能性もある。その時、国民の支持は与野党どちらに傾くか。神経戦はまだまだ続きそうだ。

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