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2008年10月29日(水) 10時10分

波紋広げる上場リートの初破綻 急速な貸し渋りで“黒字倒産”産経新聞

 東証1部に上場するリート(不動産投資信託)を運営するニューシティ・レジデンス投資法人(東京都港区)が今月9日、東京地裁に民事再生法の適用を申請した。世界的な金融危機の中で、金融機関からの融資が止まるなど資金繰りに窮した結果だった。新たな投資商品として人気が高かった上場リートの破綻(はたん)は波紋を広げている。(経済本部 山口暢彦)

 「銀行からの借り入れなどによる資金調達が滞った」。東証で9日会見したニューシティの新井潤代表は、破綻の背景に金融機関による融資の厳格化があったと説明した。ニューシティの保有物件は優良で稼働率も高かったが、急速な貸し渋りで“黒字倒産”に追い込まれたという。その遠因には上場リートの価格下落があった。

 リートは、運営する投資法人が投資家から資金を集めてオフィスビルや商業施設などに投資し、その賃料などを元に投資家に分配金を支払う仕組み。賃料は比較的安定しているため、「ミドルリスク・ミドルリターン」の投資商品として人気が高かった。だが、今回の破綻で信用は大きく失墜してしまった。

 リート価格は、海外の投資ファンドなどによる投資資金の流入によって昨年前半まで急騰した。しかし、米国の低所得者向け高金利型住宅ローン(サブプライムローン)問題を契機にした金融危機に伴い、投資ファンドはリートの売却を進めた。このため、価格は急落しており、上場リートの値動きを示す東証REIT指数は800前後で、昨年5月のピークの半分程度にまで落ち込んでいる。

 REITアナリストの山崎成人氏によると、価格下落が起きたのは、「投資法人が公募増資で資金調達ができなくなったため」という。

 投資口価格が下落すれば多額の金額を集めるため多くの投資口を発行する必要があり、1口あたりの分配金は少なくなる。結果として投資法人は公募増資が難しくなり、ニューシティも同じ状況に陥った。「そうなると、金融機関は『増資できないところには返済など不可能だ』と判断するようになった」(山崎氏)。このため、ニューシティは借り換えができなくなったほか、保有物件売却も簿価割れのため思うような資金調達に結び付かず、破綻した。

 同様に公募増資ができず、資金繰りが厳しくなっている投資法人はほかにも出ているという。一方で新たな資金調達の道を探る投資法人も出ており、今年8月には、米投資ファンド大手が、リプラス・レジデンシャル投資法人に対してTOB(株式公開買い付け)を発表した。

 すでにリート価格は大きく低下した半面、利回りは上昇しており、「今回の破綻がなければ、そろそろ反転するころだと思っていた」(不動産業界関係者)という。だが、破綻をきっかけにリートへの信頼は薄れており、価格はしばらく低迷する公算が大きい。

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