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2008年10月28日(火) 14時00分

ハッカー心をくすぐる『chumby』、日本でも一般販売開始WIRED VISION

『chumby』(チャンビー)は、小型で低価格な、加速度計の付いた、少し柔らかい手触りの、不格好だが可愛らしいデバイスだ。そしてこれは、ハッカーにとって夢の製品でもある。

米国では2008年2月に一般発売となって以来、ハッキング可能なオペレーティング・システム(OS)を搭載したこのWi-Fi接続の小型インターネット機器は、いち早く入手した人々の間で賞賛の嵐を巻き起こしてきた。[日本では10月23日から一般販売開始。価格は2万9400円]

買った人の多くは、皮張りのこの製品を擬人化したい欲望に抗えないようだ。その一方でchumbyは、ソフトウェアやハードウェアのハッカーたちをも惹きつけており、彼らは自分の思いつくままにデバイスに手を加えている。

「chumbyの最大の魅力は、オープンな組み込みハードウェア機器という点だ」と語るのは、『Linux』の熟練プログラマーAndrew Walton氏。同氏は、chumbyのソフトウェア・ハッカーでもあり、chumbyのハッキング関連のフォーラムを運営している。「オープンソースのソフトウェアには誰もが慣れ親しんでいるが、オープンソースのハードウェアというのはこれまでなかったものだ。この2つを組み合わせれば、chumbyのハッカーは文字通り、何でも思いのままにできる」

Chumby Industries社の創設者の1人で、ソフトウェア開発担当バイスプレジデントを務めるDuane Maxwell氏によると、こうしたオープン性はすべて計画の上だったという。「(chumbyの)ビジネスモデル全体が、文字通り、ハッキングされることを念頭に置いたデバイスというコンセプトのもとに開発された」とMaxwell氏は語る。

Chumby Industries社の創設メンバーには、『Xbox』のハッキングで知られるAndrew "bunnie" Huang氏も名を連ねる。chumbyがハッカーに優しい理由の一端はそこにあるのかもしれない。

その結果できあがったのが、人々の内なる「改造への欲求」を刺激し、それを満たすことに焦点を絞ったデバイスだ。「機械の中身をいじれるようにすると、人々はそれを拡張することに夢中になる」とMaxwell氏は言う。

一般的にいえば、chumbyは、重度のインターネット中毒者のための、高度に専門化したセカンドディスプレイというべきものだ。Wi-Fi接続機能を備えており、ニュース、音楽、天気、写真など、ユーザーの好みに応じてパーソナライズ化されたコンテンツを何でも提供してくれる。

chumbyの販売とライセンスを手がける米Chumby Industries社(本社サンディエゴ)によると、現在chumby向けに、米Adobe Systems社の『Flash』を使ったウィジェットが600以上作成されており、そうしたウィジェットは『chumby Network』で共有されているという[日本語版サイト説明によると、天気、ソーシャルネットワーク、写真、スポーツ、ニュースなど30のカテゴリ、600以上のウィジェットが登録されている]。

Flashは、インタラクティブなバナー広告から動画プレーヤーやゲームまで、あらゆるものを作るのにウェブ上で広く利用されているプログラミング・プラットフォームだ。Flashは柔軟性に富んでいるため、開発者は事実上、思いつく限りのどんな便利なウィジェットでも作ることができる。また、Flashは多くのウェブ開発者にとってすでに馴染みのあるものなので、chumbyにもプログラマーの多くが手を出しやすい。

もっとも、chumbyは厳密に言うとオープンソースではない。Adobeの『Adobe Flash Player』にはプレーヤーの配布ライセンスが付帯しており、配布にはAdobeの許諾を必要とするからだ。しかし、それでもchumbyは間違いなく「オープン」だと言える。chumbyは、進化を続けるLinuxベースのプラットフォームをクライアントOSとして搭載しており、Flash Playerを除けば、そのアーキテクチャは概ねオープンソースなのだ。

chumbyは、内部の電子部品が外側のシェルから簡単に外れるよう設計されている。この結果、ユーザーたちは自分の好きなように外観を作り替えることもできる。なかには、テディベアの中にスクリーンを詰め込んだ者や、フットボール、あるいは、美しくデザインされた木製ケースを利用している者もいる。

特にハードウェア・ハッカーたちを惹きつけているのが、「chumbilical」(チャンビリカル)という、chumbyのマザーボードに接続しているケーブルだ。chumbilicalは、USBポート、SBI(SCSIベース・インターフェース)バス、およびchumbyの「スクイーズ[感圧]センサー」、スピーカー、バッテリー、マイク用端子を備えたドーターカードにつながっている。開発者たちはこのケーブルを通じてさまざまな周辺機器を追加できる。例えば、chumbyを事実上の小型気象観測所にするための温度計などだ。

搭載可能なセンサーやアプリケーションは多様なので、例えばchumby内蔵の加速時計を使って交通調査を行なうプロジェクトなど、多様な使い道がそれぞれに計画されている。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081028-00000001-wvn-sci