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2008年10月26日(日) 13時20分

「煙草嫌い」の女性社員が生んだ空気清浄機 ダイキン産経新聞

 10月からダイキン工業が発売した多機能空気清浄機「クリアフォース」シリーズの新商品が、注目を集めている。部屋に染みついたにおいを「水で脱臭」する機能が人気のヒミツだ。実はこれ、研究・開発と無縁の若手社員が「大嫌いなたばこのにおいを何とかしたい」一心で考えたアイデアから実用化に結び付いたものだった。


 「クリアフォース」シリーズは除湿と加湿に加えて脱臭、集じんの4機能を備えた空気清浄機として昨年10月に売り出された。

 1年後に登場した新商品は、加湿により放出された水分子が、壁やカーテンといった布に染みついたにおいの分子を空気中に押し出す。そのうえで、自動的に除湿運転に切り替え、水分子とにおいの分子を同時に回収していく。これまで取れなかった壁やカーテンのにおいを約90%除去できるのが売りだ。

 市場想定価格は8万9800円。年間10万台の販売を目指している。

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 クリアフォースをはじめ家庭用空調機を製造する滋賀製作所(滋賀県草津市)には、全社員が参加して商品開発のアイデアを競う制度がある。毎年2月、専門の異なるメンバーで組んだチームごとにアイデアを出し、1次審査を通った案が試作や実験に入る。2次審査では開発部門だけでなく営業部門のトップも審査員を務め、事業採算性も含めて検討する。

 空調生産本部デザイングループの樫本寛子さん(28)は昨年、非技術系の若手社員10人による「20代チーム」を結成した。たばこが大嫌いな樫本さんは、「飲食店でコートなどに付いたたばこのにおいを、ハンガーにかけておくだけで取る方法はないだろうか」と考えていた。

 「帰宅したとき、部屋が換気されず、においが充満していたら疲れが倍増してしまう。さわやかな空気に迎えられたら…」

 樫本さんの提案を受け、チームはまず、脱臭に適した成分について専門家に尋ねた。すると、「脱臭はいろいろな物でできる。水もにおいを吸収する」と言われたという。樫本さんは、「自分が技術系の人間だったら、水なんて思いもよらなかった。でも、水ならばこれまでのダイキンの技術でいけると思った」と振り返る。

 チームは「水分子が布に付いたにおい分子を追い出す」との仮説を立て、1畳の3部屋にたばこ臭を付けた布を置く実験に取りかかった。3部屋は(1)加湿して除湿(2)除湿のみ行う(3)何もしない−のそれぞれの条件にした。

 4時間後の布の状態を比べたところ、最も脱臭できていたのは(1)。(2)の場合、部屋のにおいは取り除けたものの、布ににおいが残っていた。

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 手応えを感じたチームは仮説をより強固に立証するため、大学の研究室に同様の実験を依頼した。その結果、加湿して2時間後、部屋のにおい濃度はいったん高くなり、その後、除湿すると急激に布と室内のにおいが消えたという。仮説が立証された瞬間だった。

 アイデアは昨年8月の2次審査をクリア。開発担当のグループが1年かけて商品化にこぎ着けた。

 このグループの香川早苗さんは「梅雨どきの電車内などで私も布に染みこんだにおいは気になっていた。発想が新しいと感じた」と柔軟な着眼に感心しきり。「性能の保証部分の作り込みも実験で成果を見て取れたのがうれしかった」といい、技術面での心配は感じなかったという。

 商品化にあたって、回収したにおいは光触媒技術で清浄機内部で分解してしまう構造にした。たまった水を捨てるとき、使用者がにおいをかがなくてもよいようにとの配慮からだ。

 水で脱臭する機能は11月に発売されるエアコンの新機種にも搭載される。

 例年、空気清浄機は花粉症対策の需要から3月ごろが売り上げのピークを迎える。クリアフォースの投入で、香川さんは「通年で売れる商品ができた」と自信を見せる。7万台を売った初代を超えるヒット商品となるか、今後の売れ行きから目が離せない。

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