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2008年10月26日(日) 02時19分

伊藤ハム、工場の製造用地下水からシアン 267万袋を自主回収東京新聞

 伊藤ハム(本社・兵庫県西宮市)は25日、東京工場(千葉県柏市)で、ウインナーやピザなどを製造する際に使う地下水から、基準値を超えるシアン化物イオンと塩化シアンが検出された、と発表した。「人体に影響のない数値」としているが、製品への混入の恐れもあるため、東京工場で製造し、沖縄を除く46都道府県に出荷したウインナーやソーセージ、ピザなど13種類計約267万パック(賞味期限切れを含む)を自主回収する。健康被害の報告はないという。

 自主回収するのは、東京工場で9月18日から10月15日に製造された「あらびきグルメウインナー」などウインナーやソーセージ9種類、「ラ・ピッツァマルゲリータ」などピザ4種類。原材料を解凍したり材料を混ぜたりする過程で、地下水を使っていた。

 代表的なウインナー2種類について、製品にシアン化物イオンと塩化シアンの混入がないか調査しており、30日に結果が出るという。

 同社によると、定期検査で工場内に3カ所ある井戸のうち1カ所で、国の環境基準(1リットル当たり0・01ミリグラム)を上回るシアン化物イオンと塩化シアンを検出したことが9月24日に判明。再検査でも異常値を示した。

 いずれの検査も基準値を2−3倍上回り、今月16日にこの井戸の使用を中止した。10月の定期検査でも別の井戸1カ所で基準をわずかに超えた数値を検出したため、この井戸も製造過程での使用を中止している。

 今回の数値は、世界保健機関が飲料水質ガイドラインで定める基準は下回っている。

 25日夜、東京事務所(東京都目黒区)で記者会見した山田信一・生産事業本部長は、検査担当者が9月に基準を超える数値を確認しながら、本社への報告や井戸の使用中止が1カ月近く後になってからだったことを明かし、「組織内の連絡体制に不備があり、対応は不適切だった」と説明。「消費者や得意先に迷惑をかけ、誠に申し訳ありませんでした」と謝罪した。

 愛知、岐阜、三重の東海3県での回収対象製品は「シルクまろやかポークウインナー(80グラム)」「ムースボール(108グラム、54グラム)」となっている。

 ◆店頭から撤去

 伊藤ハム東京工場の地下水源の一部から基準値以上の化学物質が検出された問題を受けて、大手スーパー、コンビニなどの流通各社は25日、該当する商品を撤去した。

 イオンは、全国のジャスコやダイエーなどの傘下スーパーの店舗で在庫を確認、店頭にある商品は撤去した。イトーヨーカドーも同様の対応をした。

 一方、ローソンは自社で企画開発し、傘下の低価格店舗「ローソンストア100」「ショップ99」で販売していた低価格のプライベートブランド商品のウインナー2種類が伊藤ハムの東京工場で製造されていたため、店頭に置いていた商品を撤去した。

  <塩化シアン>  毒性のあるシアン化合物の1つ。自然界にほとんど存在せず、消毒剤や金属めっきに使用される。厚生労働省が定める水質基準では「1リットル中0・01ミリグラム以下であること」と定められている。揮発性が高く、化学兵器として用いられた場合、皮膚からや呼吸によって血液に入ると、血液循環性の毒物となり、血液と酸素の結合を妨げたり、全身けいれんを起こす。

  <伊藤ハム> 1928年創業のハム・ソーセージ大手で、売上高では日本ハムに次ぐ2位。本社は兵庫県西宮市で、グループを含め全国に10工場を持つ。食肉加工品のほか、総菜などの調理品やチーズなども手掛ける。2008年3月期の連結売上高は5179億円、グループの従業員数は5276人(08年3月末現在)。

 (中日新聞)

http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2008102690020812.html