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2008年10月26日(日) 02時31分

<比ミンダナオ島>和平交渉が決裂、6年越しの対話に幕毎日新聞

 【コタバト市(フィリピン南部)矢野純一】フィリピン南部ミンダナオ島のイスラム反政府組織「モロ・イスラム解放戦線」(MILF)と政府の和平交渉で、MILFのモハゲール・イクバル和平交渉団長は24日、毎日新聞に対し、MILFの交渉団を来月にも解散する方針を明らかにした。政府側交渉団はアロヨ大統領の指示で9月、すでに解散しており、03年から続いた和平交渉の決裂は確定的となった。

 交渉では、和平合意に向け双方が7月、新たに創設する地元統治機構に外交、国防などを除く権限を移譲するとの覚書を作成。しかし一部の上院議員や地元自治体の首長が「国の中にもう一つ国を作るようなものだ」などと反発。8月5日の正式署名前日に最高裁が「違憲の恐れがある」と署名差し止めを命じた。

 これにMILFの一部部隊が反発し、国軍との戦闘が激化。8月以降、政府発表で一般住民を中心に91人が死亡、約40万人の避難民が出ている。

 イクバル団長は「政府は和平を望んでいない。住民の犠牲者の多くは国軍によるものだ」と非難。MILF内部に政府への不信感が強まっているとしたうえで、「MILF指導部は今のところ、こうした動きを抑えているが、大きな問題になっている」と指摘。MILF内部で強硬派勢力が力をつけてきていることを明らかにした。

 政府、MILF側ともに、交渉の進展を望んでいるとされる。しかし最高裁は今月14日、最終的に、覚書はミンダナオの独立を事実上認めており憲法違反との判決を下し、和平合意に至るにはMILFがさらに譲歩する必要が生じた。

 またアロヨ大統領は交渉再開の条件として、MILFの武装解除を求めている。しかしMILFの一部部隊は国軍との戦闘状態にあり、MILF側が応じるのは困難だ。

 アロヨ大統領は、カトリック教徒や地域代表など利害関係者からなる交渉団を新たに結成する意向を示しているが、関係者の意見集約は難しい情勢だ。大統領の任期は残り1年半ほどしかなく、和平を進展させる求心力を失っていることから、単なる和平へのポーズとみられている。

 一方、イクバル団長は「我々は和平の窓口を完全には閉ざしていない」と説明し、新たな交渉の枠組みとして、国際社会に交渉への参加を呼び掛ける意向を示した。

 【ことば】モロ・イスラム解放戦線

 イスラム教徒が多数派のミンダナオ島で70年代、イスラム勢力が「モロ民族解放戦線」(MNLF)を結成し、島の独立を求めて武装闘争を開始。MNLFは96年に政府と和平協定を締結したが、78年にMNLFから分派した急進派「モロ・イスラム解放戦線」(MILF)は戦闘を継続した。MILFも03年7月、マレーシアの仲介で比政府との停戦に合意。要求を独立から自治権確立に譲歩して政府と和平交渉を進めていた。

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