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2008年10月26日(日) 18時57分

“ボクシングの星”粟生隆寛 今後の成長に期待産経新聞

 多くの世界チャンピオンを生み出している日本プロボクシング界。34歳の世界ボクシング評議会(WBC)フライ級王者、内藤大助(宮田)らベテランが活躍する一方、若手の有望株も続々と誕生している。その筆頭格が10月16日、初めて世界王座に挑んだ24歳の粟生(あおう)隆寛(帝拳)だろう。デビューから無敗での世界王座奪取は逃したが、チャンピオンからダウンを奪う健闘。今後の成長に期待を抱かせた。(奥村信哉)

 東京・国立代々木競技場で行われたWBC世界フェザー級タイトルマッチ。同級9位の粟生が挑んだのは、すでに2階級制覇を達成し、この試合がプロ71戦目のキャリアを誇る王者オスカー・ラリオス(メキシコ)。チャンピオン有利の下馬評の中、最初にリングをわかせたのは粟生だった。

 1回、鋭い出足でいきなり王者の顔面に痛打を浴びせると、4回には右フックでダウンを奪った。だが中盤からは手数が減り、尻上がりに調子を上げる王者に押し切られて判定負け。「パンチをいなされ、相手を見過ぎた。勇気がなかった」と悔しがった。

 驚くべきは、この敗戦が、アマチュアだった2000年の国体以来、8年ぶりに喫した黒星というキャリアだ。元ボクサーの父親の手ほどきで競技を始めたのは3歳。小学6年から千葉・習志野高の合宿に参加し、他県の高校生をスパーリングで圧倒することもあったという。

 習志野高時代は1年春の選抜を皮切りに、史上初の全国大会6冠を達成。03年のプロデビュー後も連勝を重ね、14戦目で日本フェザー級王座を獲得した。17戦目では互いにタイトルをかけた東洋太平洋王者の榎洋之(角海老宝石)に引き分けたものの、世界戦まで16勝(8KO)1分けの無敗街道。帝拳プロモーション社長で元世界王者の浜田剛史氏も「センスでやってきた選手。相手の力を利用し、疲れたらごまかしもうまい」と舌を巻く。

 それが世界戦では「今までみたいに足を使って浮いた状態で戦うと押し込まれる」と、持ち味のアウトボクシングを封印。最初から打ち合いに出る新スタイルを披露し、さらなる伸びしろを感じさせた。同じ日に7度目の防衛を果たしたWBC世界バンタム級王者の長谷川穂積(真正)も「まだまだ伸びるし、必ず世界チャンピオンになる」と認める逸材。そのコメントをテレビで聞き、号泣した若きサウスポーは「踏み込む勇気をもって、もう1回挑戦したい」。

 隆盛を迎えた日本プロボクシング界の星が、あこがれのチャンピオンベルトを巻いて、うれし涙を流す日はそう遠くないはずだ。

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