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2008年10月25日(土) 00時00分

筑豊炭田労働史を考察読売新聞

小倉南の元高校教諭本出版
著書を手にする工藤さん

 小倉南区上貫3、元高校教諭の工藤■也(せいや)さん(65)が9年がかりで執筆した「筑豊炭田に生きた人々—望郷の想い『近代編』」(海鳥社)を出版した。古里・筑豊の炭田について、江戸から明治までの歴史を検証したもので、大正以降に関しても執筆を進めている。

 工藤さんは1943年、小学校教諭の父の赴任先だった韓国・ソウルで生まれた。一家は終戦直後の45年9月、両親の古里・二瀬町(現・飯塚市の一部)に移った。同町には高雄炭鉱があり、曽祖父と祖父がともに働いた。

 工藤さんは地元の高校から国学院大に進学。卒業後、県立高校教諭となり、北九州、筑豊地区を中心に日本史の教壇に立った。

 執筆のきっかけになったのは、定年退職5年前の99年に出席した、46年ぶりの小学校の同窓会。父母や親族らが炭鉱で働いた人が多く、76年までに姿を消した筑豊炭田を詳しく知りたがっているのが分かり、史料や証言を集め始めた。

 本では、筑豊の採炭は江戸時代まで、農閑期の農民の副業だったと指摘。明治維新後の近代化に伴い、石炭の需要が高まる中、貝島太助や麻生太吉、安川敬一郎ら有力な炭鉱経営者が現れたことを紹介している。

 中でも注目したのは、労働力の確保や作業効率の向上を目指して採用された「納屋制度」。坑員の労務と生活を一括して管理する「納屋頭」だった曽祖父の足跡をたどりながら、石炭生産を支えた坑員らの働きや暮らしぶりを考察した。工藤さんは「地域の歴史をよく知り、見つめ直すことが地域活性化にもつながるはず。故郷である筑豊へのささやかな恩返しになれば」と話している。

 B6判232ページ。1680円(税込み)。問い合わせは海鳥社(092・771・0132)へ。

※■はさんずいに「靜」

http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/fukuoka/news/20081024-OYT8T00783.htm