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2008年10月25日(土) 00時00分

「路木ダム継続が妥当」…浸水被害の議論なく読売新聞

 県公共事業再評価監視委員会(委員長=滝川清・熊本大沿岸域環境科学教育研究センター教授、12人)は24日、県が天草市河浦町の路木川に計画する県営路木ダムについて「事業継続が妥当」との判断を示した。同ダムを巡っては、建設の契機となった浸水被害の正確な記録が残っていなかったり、県が委員会で示した水害時の写真が別の川を写したものだったりしたため、必要性に疑問の声が上がっているが、委員会では、事業継続を求める県の意見を追認した形になった。(佐々木道哉)

 県は、1982年の路木川のはんらんで約100棟が浸水したとしているが、資料は残っていないという。一方、計画に反対する住民団体は「82年の水害では路木地区では浸水被害はなかった」と主張し、見解が分かれている。

 委員会では、「ダムは必要不可欠で事業継続」とする県の評価が示された。これに対し、委員からは、「ダムとダム以外の治水対策で費用負担の差がどれぐらいあるのか」「洪水時の被害区域はどのように決めたのか」との質問が出されたが、過去の浸水被害について説明を求める声は出なかった。

 滝川委員長は審議後、「委員会の役割はダムの是非論に踏み込むことではない。地元の要望で始まった事業で、総合的に検討し現時点では継続と判断した」と述べた。委員会は年内に知事に結果を報告する。

 同ダム(堤高53メートル、総貯水量229万立方メートル)は、治水、利水を目的に93年に事業着手。県は来年度に本体着工し、2013年度の完成を目指す。総事業費は約90億円。

 ダム反対派の「路木ダムを考える河浦住民の会」の小川浩治代表は「県が水害を捏造(ねつぞう)したことが認められず、残念だ」と憤り、県による現地調査を求めた。安田公寛天草市長は「水の安定供給を求める市民の願いがかなえられた。委員会の判断を高く評価したい」と話した。

http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/kumamoto/news/20081024-OYT8T00800.htm