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2008年10月25日(土) 16時37分

がん医療の格差なくせ 東海の8大学が連携東京新聞

 がん医療の地域格差の解消−をテーマの一つに掲げ、日本癌(がん)学会と日本癌治療学会の初の合同学術総会が、28日から5日間の日程で名古屋市で開かれる。がん専門医の底上げと増加を図る東海地方の「がんプロフェッショナル養成プラン」の実践報告もある。「がん難民」をなくす取り組みを追った。(社会部・島崎諭生)

 岐阜県高山市の男性(67)は3年前、鼻の奥にできた悪性腫瘍(しゅよう)で、妻(61)=当時=を亡くした。地元の病院で発見が遅れ、放射線治療をしたが、再発。抗がん剤治療のため岐阜市の病院に入院させた。車で片道2時間半かけて通ったが、好転しなかった。

 「都会にいたら、最初の診断も違っただろう。全国どこででも最良の治療が受けられれば」と男性は嘆く。

 がんは日本人の死因1位で、年間約33万人が亡くなっている。国は「全国どこでも安心、納得できるがん医療の提供体制」を目指し、今春までに全国351病院を拠点病院に指定。しかし高度な治療ができる医療機関は都市部に偏っている上、抗がん剤を使う化学療法や、放射線療法の専門医が不足している。

◆地域のプロを養成

 愛知、岐阜、静岡3県をエリアとする東海地方の「がんプロフェッショナル養成プラン」は8大学が連携。化学療法に強い名古屋大、痛みを緩和する治療が充実する藤田保健衛生大などが得意分野を指導する。

 各大学の大学院や短期研修などに数カ月−4年間の3コースを用意。希望する医師や放射線技師、薬剤師、看護師らが病院を辞めたり休みを取ったりして参加している。受講者は延べ約50人になる。

 愛知県内の病院の呼吸器内科医だった稲田めぐみさん(31)は、名大大学院の4年間の化学療法専門医師養成コースに入学。「肺がん患者を診るうちに詳しい治療法を学びたくなった。いろんな臓器のがんも診られ、幅広い知識が身に付く」と手応えを語る。再び呼吸器内科を中心に仕事をするか受講後の進路は未定だが「どこに行っても幅広くがんを診られる医師として活躍したい」と力を込める。

 がんプロを指導する名大病院化学療法部の安藤雄一部長(43)は「がん医療が高度、専門化する中で、世界標準の医師やスタッフは圧倒的に少ない。5年後には、東海地方のがん医療は良くなったと感じられるようになるはず」と自信を見せる。

 日本癌学会の学術総会会長を務める上田龍三・名古屋市立大教授(64)は「将来は専門医だけでなく、かかりつけ医、市民まで広げてネットワークをつくる必要がある。今回の学術総会をそんな態勢づくりの一里塚にしたい」と話している。

 【がんプロフェッショナル養成プラン】 昨年4月施行のがん対策基本法を受け、専門の医師や放射線技師、看護師らの不足解消を目指し昨秋、文部科学省が全国18カ所で選定。東海地方は名大、名城大、藤田保健衛生大、名古屋市立大、愛知医科大、岐阜大、岐阜薬科大、浜松医科大が参加。三重県は近畿エリアで、三重大、京都大、滋賀医大、大阪医大の4大学が進めている。

(中日新聞)

http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2008102590150658.html