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2008年10月25日(土) 13時50分

大型マンション建設余波 待機児童急増 対策ラッシュ東京新聞

 東京都内で保育園に空きがなく入園できない「待機児童」が四月一日現在、前年度比八百七十八人増え、二〇〇二年度以降で最多の五千四百七十九人になったことが分かった。育児休業制度の利用の広がりに加え、二十三区内で著しい大型マンション建設ラッシュなどで、子育て世代が流入していることが背景にある。各区は「マンション内保育園」の増設など緊急的な対応に追われている。 (小林由比)

 超高層マンションが立ち並ぶ臨海部の江東区豊洲地区。豊洲二丁目のマンション内に四月に開園した「シンフォニア保育園」から、散歩に出掛ける子どもたちのにぎやかな声が聞こえてきた。大規模マンションの新設時に併設される保育園が増え、来春にも有明や亀戸などの大規模マンション内に百人規模の認可園ができる。

 臨海部を中心にマンション開発が続く同区では、乳幼児の数が増え続け、昨年度の待機児童数は都内でワーストの三百五十二人に上った。区は「とにかく必要な園をつくる」との方針で、昨年から今年にかけ区の認可園四カ所と、設置基準がやや緩い都の認証保育園十一カ所を開園。本年度の待機児童数は二百十九人に減り、都内ワースト七位まで改善させた。同じ時期の削減数としては全国で二番目に多かった。

 区が着目したのは、新しいマンションの敷地内に保育園をつくる手法だ。開発事業者に計画段階から設置を要望。区の要綱に基づき三十戸以上の世帯向けを建設する場合、一戸につき百二十五万円を事業者が支払う「公共施設整備協力金」の代わりに、自前で保育園をつくるよう求めている。子育て世代にアピールでき、応じる事業者が多いという。

 同じく湾岸部の芝浦地区などにタワーマンションの完成が相次ぐ港区。「子育て世代の流入は予想以上。マンション購入後は、経済的に共働きを望む世帯が多く、入園希望者も多い」(同区)。廃校になった小学校を改修して使用するなど「緊急暫定保育施設」を二カ所設けた。

 各区とも「現時点で非常に困っている保護者がいる喫緊の課題。できる限り受け入れ定員を増やしたい」としている。ただ、急ピッチな保育所整備には課題もある。

 まず、保育水準の確保。「保育士の確保が難しくなっている」という声が多い。江東区は「都の認証園も含め、区内の保育園はどこでも安心して預けられるようにする責任がある」と区独自に保育状況のチェックを始めた。また、全般的な少子化傾向は変わらない中、局所的に整備することで、将来的に配置バランスが悪くなることも懸念されている。

(東京新聞)

http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2008102590135009.html