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2008年10月25日(土) 07時10分

東証バブル後最安値も目前 買い支える国なく…東京新聞

 二十四日の東京株式市場で日経平均株価(225種)が七六四九円〇八銭と、二〇〇三年四月に付けたバブル経済崩壊後の最安値(七六〇七円八八銭)を割り込む寸前となった。当時、日本経済は不良債権問題で深刻な景気低迷にあえいでいたが、市場では世界的な経済情勢は現在の方が深刻との声が支配的。投資家らは底の見えない不安におびえている。 (池尾伸一、坂田奈央)

◆異常な低水準

 この日の株価下落要因は急速な円高。円はドルだけでなく欧州やブラジル、南アフリカなど新興国の通貨に対しても急騰。これを受け、ソニーが14%も下げるなど海外市場依存度が高い大手製造業が軒並み暴落した。

 これまで、欧米の投資銀行などは、超低金利の日本で円を借りて、高金利の欧米や資源国の通貨に換えて運用、利ざやを稼いできた。だが、世界金融危機による急速な景気悪化で、欧州はじめ各国が相次いで利下げに踏み切る見通しも強まり、円を買い戻す動きが一気に強まっている。

 株価の急落に次ぐ急落により、会社が解散した場合、一株当たり株主に戻る価値が、現在の株価に対してどの程度かを示す指標「株価純資産倍率(PBR)」も低下。現在はソニーで〇・六七倍、トヨタ自動車で〇・九九倍、東証一部全体でも一倍より低い状況だ。これは現在の株価は企業が清算した価値よりも安い「異常な低水準」(アナリスト)に下がっていることを示す。

 だが、市場の売買代金シェアの六割を占める欧米の金融機関は本国で資金繰りに窮しており、「手元に現金を置こうと、指標に関係なく、どんどん日本の株式を売っている」(新光証券の三浦豊シニアテクニカルアナリスト)という。

 株価が下げ止まる気配がないなか、個人投資家も投資意欲を喪失している。

◆冬本番はまだ

 株価がバブル崩壊後の最安値を記録した〇三年四月当時は日本経済は「過剰雇用、過剰債務、過剰設備」を抱え、経済低迷は深刻だった。

 しかし、第一生命経済研究所の熊野英生主席研究員は「現在の方が状況は悪い」と言い切る。当時、米国や欧州経済はITバブル崩壊後の景気低迷からの回復局面。世界経済は拡大途上だった。最安値を記録直後の五月、政府が「りそなグループ」への公的資金注入を決定したのを機に金融不安が緩和。小泉改革への期待もあり、海外からの資金流入で日経平均は八月には一万円を超えた。

 しかし、今回は世界経済冷え込みはこれからが本番。米国が金融不全に陥る中、ファンドや投資銀行による日本への投資も期待できない。

◆素早さがカギ

 海外発の危機に日本政府による対策は限定的とならざるを得ず、市場関係者が期待を込めるのが欧米による一段の対策だ。特に十一月四日の大統領選を控え政策がまひ状態に陥っている米国が、新大統領決定後、空白期間を長引かせることなく素早く動けるかが鍵。十一月十五日にワシントンで開かれる金融危機対策を話し合う緊急首脳会合(サミット)に向け、資本注入の迅速化や需要てこ入れ策などの対策が打ち出せるのか−。あるアナリストは「もたつけば株価は六〇〇〇円台割れもありうる」と予想する。

 <株価純資産倍率(PBR)> 株価を1株当たりの自己資本の金額で割って算出する。数値が小さいほど割安を意味。自己資本は企業が借金などを返した後に残る最終的な株主の取り分なので、1株当たり自己資本は「解散価値」とも呼ばれる。

(東京新聞)

http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2008102590071045.html