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2008年10月25日(土) 23時35分

【金融危機】政府、国会、日銀 バラバラ責任体制、不作為の罪産経新聞

 やまぬ市場の阿鼻叫喚。日本の株式暴落はもはや円高のせいばかりではない。史上未曾有の世界金融危機に直面しながら、日本の場合は責任体制がバラバラ。政治の世界では与野党の思惑が先行して緊急対策が危うい。財政と金融は一体となるべきなのに、日銀は相変わらず「政府からの独立」を盾に東京・日本橋の本店に閉じこもっている。金融市場では不信と恐怖が広がり、カネはあり余っているというのに、流れない。「市場の失敗」ではなく政府・国会・日銀の不作為という重大犯罪による。

 「全体としては健全性、安定性を維持しています」とは、国内金融市場について白川方明(まさあき)日銀総裁が14日の金融政策決定会合後の発言である。ところが10日、ある地方の信用金庫が市場で資金調達を拒否された。こうした例は日を追うごとに増えている。「今や中堅規模の銀行までも難渋している」(市場関係者)。大手金融機関にはドル資産がたたき売られ、円に換金された資金が預金となってなだれ込む。ところが中小金融機関の多くはドルの問題資産に投資し、国内向けも投資不動産業の不振や地方景況の悪化のあおりを受けている。大手は焦げ付きを恐れて手元の余剰資金を中小の金融機関に流さない。その大手も株価の急落のために保有株式は大きく目減りし、自己資本を食いつぶしはじめた。

 1990年代後半、地方の金融機関の経営破綻(はたん)に端を発した日本の金融危機は大手に及んだ。負の連鎖の悪夢が再来しかねないというのに、政府と日銀のトップは官僚が書いた作文を読み上げるばかり。いずれの項目も「検討」の二文字付きだ。

 金融機関への公的資金注入枠拡大を盛り込んだ金融機能強化法改正案は、超党派でさっさと成立させるべきだが、政局によりもみくちゃにされかねない。「自民党の資金源になっている農協系金融機関向けじゃないか」など、野党側の思惑がからんでいるためだ。

 国会は白川日銀総裁に説明を求めるべきなのに、「白川総裁は民主党が選んだ」と与党側の無念さが先行する。財務省と金融庁の対話は欠け危機管理総合策はでない。

 今やデフレ不況懸念が世界に広がっているというのに、日銀はいまだに「インフレ懸念」にこだわり、市場に流した資金を翌日に引き揚げている。垂れ流されるドルが、引き締め気味の円に対して急落するのは市場の当然の反応だ。

 最近東京で会った、世界最強の金融集団といわれる香港上海銀行グループ(HSBC)元会長のジョン・ボンド卿は「グローバル危機の中で今や現金こそが王様。豊富な預金を持つ日本の銀行は勝ち組」と称賛した。だが、市場というものは猛スピードで暴走し、一夜にして勝ち組を負け組にしてしまう。ブッシュ政権は9月に大手証券リーマン・ブラザーズの破綻を放置して以来、対策は市場の後追いに終始している。日本がまごつく時間はない。(編集委員 田村秀男)

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