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2008年10月25日(土) 11時30分

<フランス>シラク前大統領「秘密口座」疑惑再び毎日新聞

 フランスのシラク前大統領(75)が90年代に「東京相和銀行(現東京スター銀行)に巨額の口座を持っていた」とされる疑惑の捜査が、思わぬ筋から動き出した。シラク氏の金銭問題を取材していた記者が97年に失跡する事件があり、ここに来て再捜査の道が開けてきたからだ。一度は立ち消えた前大統領の“秘密口座”について再び関心が集まろうとしている。【パリ福井聡】

 モラン国防相は22日、仏国防省の情報機関、対外治安総局(DGSE)が作成したタヒチでのジャンパスカル・クロー記者(当時37歳)失跡事件に関する機密書類の公開決定を発表した。仏国家防衛機密諮問委員会の答申を受けての決断だった。

 97年に行方が分からなくなったクロー記者は当時、シラク政権と親密な関係にあった仏領ポリネシアのフロス元行政長官周辺の業者から、シラク氏の口座に巨額資金が送金されたとされる疑惑を調べていた。その口座が開設されていたのが日本の東京相和銀行だったという。

 同記者の失跡をめぐっては、タヒチのパペーテ地裁は02年、「自殺」と判断。ところが、フロス氏がその設置に深く関与した特殊部隊GIPのギユー元隊員が04年10月、「クロー記者は誘拐され拷問を受けた後、海に沈められた」と“告発”し、「殺害された」と主張する家族らの要請で捜査が再開された。その後、ギユー氏がその証言を撤回するなどの曲折を経て、同地裁のレドネ予審判事は今年6月、パリのDGSE本部から機密文書を押収。今年9月にはフロス氏の自宅も家宅捜索していた。けれども、押収した文書などは“封印”されていた。

 それにしても、機密諮問委員会の公開決定は絶妙なタイミングだった。サルコジ大統領の私生活などを調査した記録(通称ベルトラン・メモ)がメディアに流出した件で、サルコジ氏がプライバシー侵害などの罪で仏内務省情報総局(RG=公安警察)のベルトラン元長官(64)を告訴した直後だったからだ。ベルトラン氏はシラク前大統領の命を受けていたとされる。

 サルコジ、シラク両氏は95年に対立が表面化。昨年5月のシラク氏退陣後は友好ムードも見られたが、ベルトラン・メモの件で再度険悪化したとされる。クロー記者失跡をめぐる、今回の諮問委員会の判断はサルコジ氏による「告訴」とワンセットとみられる。

 シラク氏の秘密口座疑惑は、DGSEのロンド元局長が07年5月、「シラク氏の東京相和銀行の口座に定期的に振り込みがあり、総額3億フラン(約65億円)に達していた」という内容のメモなどを残していたことで表面化した。ロンド氏は、シラク氏の盟友、ドビルパン前首相がサルコジ氏の追い落としを図ったとされる別の疑惑を捜査していた。

 当のシラク氏はパリ市長時代(77〜95年)の公金不正支給事件で昨年11月、被疑者に認定され歴代仏大統領で初の訴追対象となっている。そして、今回の記者失跡事件の再捜査で、さらに窮地に追い込まれた格好だ。

 一方、シラク氏の秘密口座疑惑について、東京スター銀行の広報IRグループは「特定の口座について、その有無も含めて話せない」としている。

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