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2008年10月24日(金) 10時26分

犯罪被害者白書に池田小遺族が手記「家族思いやるように寄り添って」産経新聞

 政府は24日、犯罪被害者に対する政府の支援策の実施状況をまとめた平成20年版「犯罪被害者白書」を閣議決定した。白書では、13年に起きた大阪教育大付属池田小の児童殺傷事件の遺族、酒井肇さん、智恵さん夫妻が手記「私たちの望んだ支援、受けた支援」を寄せ、自らの体験をもとに犯罪被害者支援とは何かをつづっている。

  【グラフで見る】犯罪被害を受けた直後に必要だった支援は?

 手記で「家族が被害に巻き込まれるなど、想像すらしたこともありませんでした」と振り返る酒井さん夫妻。池田小事件で長女の麻希さん=当時(7)=を亡くしてから7年になる。当時、「混乱の極み」に陥りながらも、「何が起きたのか、すべてを知りたい」と大阪府警に要請。血痕など現場の状況から、麻希さんが「一歩でも前に逃げよう…最後までがんばって生きようとした事実」を知り、今後の人生の活動に意味を見いだしたという。

 そして、その後の支援者らとの出会いや受けた支援の体験から、本当の支援とは、「マニュアル的な一方通行のコンタクト」でなく、「被害を受ける前まではできていたように、私たちの生活を自らが選び、決めていく作業を支えてくれ」るものと指摘。「一般論ではない目の前にいる被害者が、何を感じ、何を考え、何を求めているのか、寄り添ってみてください。大切な家族を思いやるように」と訴えている。

 白書は昨年に続いて3回目の発行で、17年12月に閣議決定された「犯罪被害者等基本計画」に基づく258項目の被害者対策について、その進捗(しんちょく)状況をまとめた。それによれば、「遺族給付金」「障害給付金」の大幅引き上げが実現したほか、刑事裁判の「被害者参加制度」や「少年審判の傍聴可能」など、今年12月までに施行されるものも多く、制度的な枠組みづくりはほぼ達成したといえる。

 ただ、地方公共団体の取り組みでは、今年7月現在で42の都道府県・政令指定都市で犯罪被害者への総合的な対応窓口を設置しているものの、被害者にとって身近な市区町村は「施策についての理解・認識が十分でなく取組が低調」で、今後の充実が待たれる。

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