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2008年10月24日(金) 06時02分

当せん金で借金返済…宝くじ殺人スポーツ報知

盛岡駅に到着した熊谷甚一容疑者(右)

 2億円の宝くじに当せんした岩手県一関市の無職・吉田寿子さん(当時42歳)=写真=が2005年に殺害された事件で、殺人容疑で逮捕された元交際相手の朝日新聞配達員・熊谷甚一容疑者(51)=解雇=が、当せん金の一部を自分の借金返済に充てていたことが23日、分かった。熊谷容疑者は「金銭トラブルから殺害した」と供述。事件当時、容疑者の口座へ複数回にわたり、1000万円単位で入金があったことも判明した。県警は大船渡署に捜査本部を設置。関連を調べている。

 殺害の動機は金銭トラブルだった。捜査本部の調べで、熊谷容疑者が吉田さんの当せん金の一部を、自ら借金返済に充てていたことが判明。さらに容疑者の口座には複数回にわたり、1000万円単位の入金があったことも分かった。

 04年夏の「サマージャンボ宝くじ」で2億円が当せんしたことを、吉田さんは家族らに知らせていなかったという。捜査本部では、当時の交際相手だった熊谷容疑者だけが、当せんを知っていたとみている。

 熊谷容疑者は岩手県内で電子部品製造会社を経営。一時は数十人の従業員を抱え、あちこちで飲み歩くなど、羽振りもよかった。しかし、05年末には経営が破綻(はたん)。個人的にも借金を抱えていたという。

 捜査本部によると熊谷容疑者は、宝くじの当せん前から吉田さんに100万円の借金をしていた。吉田さんの元同僚(63)が「最後に会った05年3月ごろにも、返済してくれないと言っていた」と証言している。

 関係者によると、熊谷容疑者の岩手での仕事ぶりはまじめ。子どもが通う高校で、父母会の会長も務めていた。吉田さんが働いていた一関市の携帯電話製造会社にも出入りしており、部品の受け渡しなどで吉田さんと知り合い、交際が始まったとみられる。

 吉田さんは、元同僚によると「休憩時間には本を読んでいるようなおとなしい」性格。一方で熊谷容疑者は「女性に優しいタイプ」で、女性の知り合いも多かったという。2人が交際していたことは、うわさになっていた。

 04年夏、吉田さんはサマージャンボ宝くじに当せん。05年2月には「ゆっくりしたい」と早期退社優遇制度に申し込み退社している。それに前後して、熊谷容疑者の会社経営は苦しい状態に陥っていた。05年4月ごろ、吉田さんは一関市の自宅から引っ越し。そのまま行方不明になった。

 捜査本部によると、熊谷容疑者が住んでいたことがある陸前高田市の家から昨年2月、吉田さんの預金通帳や印鑑などが見つかった。熊谷容疑者は06年ごろに東京に移っていた。

 捜査本部は23日、岩手県陸前高田市で発見された遺体を歯型などから吉田さんと断定。熊谷容疑者は「首を絞めて殺害した」と供述している。捜査本部は23日、熊谷容疑者を警視庁から岩手県警に移送し、本格的な取り調べを開始した。

http://hochi.yomiuri.co.jp/topics/news/20081024-OHT1T00116.htm