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2008年10月23日(木) 23時38分

<社会保障費試算>判断材料乏しく 追加負担増に触れず毎日新聞

 政府が23日、医療・介護費用の試算を示したことで、国の社会保障に関する試算が出そろった。公表済みの年金改革に要する費用の試算と合わせると、政府が社会保障制度の維持に必要と考える負担の規模が浮かび上がる。しかし、国民が是非を判断する材料は乏しいうえ、さらなる負担増の可能性にも触れていない。【吉田啓志、堀井恵里子】

■最低保障年金創設で消費税10.5%

 医療・介護はいずれの改革プランも、税の負担増は消費税なら4%程度分(14兆円)だ。一方、基礎年金は09年度から国庫負担割合(37%)を2分の1に引き上げることが決まっており、25年にも1%(3兆円)の財源が必要となる。双方を足すと5%で、消費税は今の5%と合わせ、10%にアップする。

 政府は低年金者の救済策も検討している。最も税負担が少ないのは最低保障年金(5万円)を支給する案で、追加負担は0.5%程度(1.2兆円)だ。

 基礎年金を全額税方式にする場合、過去の保険料未納分を減額して給付する案で3.5%(15兆円)の負担増となる。逆に過去の納付に見合う分を上乗せする案だと8%(31兆円)が必要。旧制度でもらえたはずの年金全額を加算する案では負担増が10.5%(42兆円)となり、全体の消費税率は最大20.5%程度となる。

■産科医、介護職員増 具体策なく

 「改革したら4%増税。しなくても3%増。さあどっち?」

 医療・介護の試算は、国民にこう迫る。政府が年金や医療の費用を示すのは、将来の消費税増税への地ならしにほかならない。しかし今回の試算には、1%余計に負担してでも受けたいと思わせるメニューはない。

 プランの概要は、大病院の機能を入院に特化し、外来患者を開業医に委ねて勤務医の負担を軽減すれば、医師不足を補える−−というもの。理念先行で、産科医不足など目の前の課題をどう解消するかは答えていない。

 介護職員を今の2.2倍にするとも言う。だが、どう人を集めるのかを示さないと、絵空事に終わりかねない。

 今回の試算は、医療財政の改革には着手しないことを前提としている。だが、団塊の世代が65歳にさしかかろうとする中、老人医療費への一層の税投入は不可避というのが関係者の共通認識だ。

 舛添要一厚生労働相は後期高齢者医療制度にそろえ、65〜74歳の医療費にも5割の税投入をするアイデアを示している。それには2兆〜3兆円の増税を伴うが、そうした数字も一切反映されていない。

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