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2008年10月23日(木) 22時36分

<温暖化対策>世界の都市、危機感を共有 C40東京会議毎日新聞

 23日に閉幕した「C40気候変動東京会議」では、温暖化による市民生活への深刻な影響に、世界の主要都市が危機感を共有していることが示された。各都市の担当者は先進的な事例を紹介したうえ、「国の動きは遅い」と不満をあらわにした。

 世界の人口の半分以上は都市部に住む。多くの都市は河川の近くや沿岸部にあり、海面上昇や洪水の被害を受けやすい。国連の「気候変動に関する政府間パネル」は21世紀末までに海面が最大で58センチ上昇すると予測する。さらに、都市部では温暖化にヒートアイランド現象が重なり、気温の上昇幅が大きい。

 日本では海抜10メートル未満の低地に約2700万人が暮らす。昨夏、東京都と17政令市で熱中症のために搬送された患者は過去最多の5102人だった。ロンドンでは50年代までに夏の気温は3・6度上昇し、大規模洪水が起こると市内の15%が被災すると予測される。

 都市の中には、国に先行して大胆な施策を導入するケースが目立つ。首長のリーダーシップで素早く対応できる身軽さに加え、政府レベルの対策の遅れに危機感があるからだ。

 例えば、カナダ最大の都市トロントは20年までに90年比で温室効果ガスの30%減を掲げ、来年は太陽熱を反射させるためのビル屋上工事などに120万ドルを投じる。カナダ政府が京都議定書で義務づけられた「12年までに6%減」という目標を達成不可能と表明したのとは対照的だ。

 自動車通行量40%減を掲げるパリの担当者は「03年の熱波による死者の2割は大気汚染も影響していたが、国は交通対策を強化しなかった。都市が国にプレッシャーをかけるべきだ」と話す。

 ロンドンは「25年までに二酸化炭素60%減」との目標を掲げ、屋上緑化推進などを進める。シャーリー・ロドリゲス環境局長は「被害が出てからより、今対処した方がコストも安い」と主張する。

 都市間の連携が進むのは、国家間と比べ南北間対立が比較的少ないことも背景にある。

 末吉竹二郎・国連環境計画金融イニシアチブ特別顧問は「国同士は、片方が得をすればもう片方が損をする『ゼロサムゲーム』のことが多いが、都市同士は競合が少なく、同じ課題を共有しやすい。都市がリーダーシップを取って、国家の政策に影響を与えていくことが増えるのではないか」としている。【大場あい、須山勉】

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