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2008年10月23日(木) 21時32分

<米兵事件>「1次裁判権を放棄」 研究者が日米密約文発見毎日新聞

 日本に駐留する米兵らによる事件について日米両政府が1953年10月、「日本にとって著しく重要と考えられる事件以外は1次裁判権を行使するつもりがない」との密約を交わしていたことを裏付ける文書が明らかになった。国際問題研究者の新原昭治さん(77)が23日、米国立公文書館で見つけた機密文書を公表した。日本政府は、こうした合意や密約を否定している。

 この文書は米国立公文書館が95年に公開を解禁した在日米大使館秘密外交文書の一部。53年10月28日付の日米合同委員会裁判権分科委員会の議事録で、日本側代表が在日米兵やその家族について「日本に著しく重要と考えられる事件以外については1次裁判権を行使するつもりがない」との見解を提示。米国側代表とともに署名し、合意したことになっている。

 米兵らの日本での法的地位を定めた日米行政協定を53年9月に改定した際、「日本国の当局が、裁判権を行使する第1次の権利を有する」と明記。しかしこれと並行する交渉で1次裁判権の事実上の放棄を密約していたことになる。実際、日本側は53〜57年の間に起きた事件の97%の第1次裁判権を放棄している。日米行政協定に代わる現行の日米地位協定も同じ条文を踏襲している。

 新原さんは23日、国会内で記者会見し「米兵による事件の処理に現在もこの密約が影響していると考えている」と述べた。

 これに関連して河村建夫官房長官は同日の記者会見で「日本人による事件と、米軍構成員などによる事件で起訴すべきか否かの判断に差はない。1次裁判権を行使しないとの日米間の合意、密約はない」と述べた。

 日米地位協定に詳しい本間浩・法政大名誉教授は「1次裁判権に関し密約があったとの見方が公文書で確かめられたことは評価される。日本政府は機密文書が情報公開の対象になっても『預かり知らぬ』という態度だが、国民に明らかにすべきだ」と指摘している。【大谷麻由美】

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