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2008年10月22日(水) 02時32分

<北朝鮮重油支援>日本留保分を豪が肩代わり…米が打診毎日新聞

 【ソウル堀山明子】北朝鮮の核施設無能力化の見返りとして6カ国協議参加国が提供するエネルギー支援のうち、日本が拉致問題を理由に実施を留保している重油20万トン相当について、米国は豪州に肩代わりさせる方向で参加国に打診していることが分かった。ソウルの米韓協議筋が21日、明らかにした。核廃棄段階での北東アジア地域の安保協力体制構築の論議をにらみ、米国の主要同盟国である豪州を活用する戦略構想として米国政府内で浮上したといい、6カ国協議の枠組み拡大論議に発展しそうだ。

 見返り支援をめぐっては、6カ国協議の初期段階措置で合意した昨年2月以降、豪州のほかニュージーランドや欧州連合(EU)が参加の意向を示していた。

 米韓協議筋によると、フランスを除くEU諸国は北朝鮮と国交があるため、北朝鮮はEUの支援参加を期待。これに対し米国は、今後の地域安保協力体制の論議を視野に、米国と協調して戦略的主張ができる豪州の参加を支持しているという。同協議筋は「6カ国協議での発言力が低下した日本に代わり、豪州が米国の主張を支える役割を果たすだろう」と述べた。最終的には複数の国が支援に参加するとみられるが、豪州は単なる支援参加国にとどまらない可能性もある。

 一方、韓国外交通商省当局者は21日、日本の分担を肩代わりする支援国について「まだ初期的な協議の段階で、公式に確定した国はない」と説明。6カ国協議の枠組み拡大についても「7〜8カ国の協議に変容する可能性には否定的だ」と慎重な見方を示した。

 ◇6カ国協議で日本の発言力低下も

 北朝鮮に対するエネルギー支援で日本が支援を留保する重油20万トン相当を米国が豪州に肩代わりさせる方向で調整が進んでいることは、6カ国協議での日本の発言力低下につながる恐れがある。米国の北朝鮮へのテロ支援国家指定解除によって日本外交はダメージを受けたばかり。米主導の「日本抜き」のエネルギー支援の動きが6カ国協議の枠組み拡大論に点火すれば、日本が主張する拉致問題の解決の先行きにも悪影響を与える可能性がある。

 エネルギー支援の肩代わりに関して外務省幹部は21日、「他国が出すならば、日本は『どうぞ』と言うだけだ」と語り、拉致問題の進展がなければ、エネルギー支援を行わない方針に変更はないと強調した。

 しかし、テロ支援国家指定が11日に解除されて以来、他の6カ国協議の関係国が日本に支援を求める圧力が強まったのも事実。外務省幹部の強気の発言は追い詰められた日本政府の窮状の裏返しでもある。

 6カ国協議で日本が最重視してきた米国との協調も指定解除できしみが生じたうえ、拉致問題とエネルギー支援の板挟みで身動きが取れず「孤立感」も漂い始めている。豪州へのエネルギー支援肩代わりは6カ国協議の枠組みを広げ、日本には圧力とも映る。

 こうしたことから、日本は6カ国協議の北朝鮮非核化のプロセスに非協力的と受け取られる事態を避けたい狙いから、核廃棄に必要な資金・技術を供与する方向で検討を進めている。政府は昨年、国際原子力機関(IAEA)を通じて核施設の稼働停止・封印の検証費用として50万ドルを拠出。外務省幹部は「核の廃棄は日本の安全保障にプラスになる。北朝鮮の核廃棄に日本が貢献しないというつもりはない」と強調した。【大谷麻由美】

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