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2008年10月22日(水) 02時32分

<農地>残土不法投棄横行…「違反転用追認」つけ込み毎日新聞

 産廃業者が「農地を改良する」などと農家に持ちかけ、大量の建設残土を農地へ運び入れる不法投棄が各地で横行している。千葉県船橋市では、農地法の転用許可がないまま、水田に残土を高さ5メートル以上も積まれて残土置き場になるケースが発生。違反転用の8割以上が追認される「やり得」の状況につけ込み、違法な産廃業者が農地を狙っている構図が浮かんだ。

 船橋市では07年9月、市北東部の水田25アールに、無許可で残土が大量搬入されていることが発覚した。地権者の男性(78)によると、10年以上前に県内の産廃業者から「田を畑に変えないか。謝礼も払う」と持ちかけられ、土を盛って畑にするために必要な量の残土搬入を了承。謝礼20万円も受け取った。だが、ダンプや重機で短期間に大量に盛り土されたという。

 搬入した業者は登記簿上の住所に事務所はなく、休眠状態となっている。男性は「がれきも混じっているようだ」と話し、残土に廃棄物を混ぜることを禁じた廃棄物処理法違反の疑いもある。

 同市農業委員会は違反転用状態とみなし男性から事情を聴き、08年6月までに撤去するよう指導した。だが、男性は費用を捻出(ねんしゅつ)できないとの理由で撤去に応じていない。

 農地への残土搬入を巡っては農業委の上部組織、全国農業会議所の調査でも▽建設業者が農家に「新たな土をかぶせる改良を無料で行う」と持ちかけ質の悪い残土を入れられ耕作不能となった(愛知県)▽耕作放棄された水田に「畑地化のための盛り土」名目で残土が持ち込まれ水路の流れが悪くなった(静岡県)−−など各地で被害が発生。内閣府の03年3月のまとめでも千葉、埼玉、神奈川3県で、残土を含んだ農地への不法投棄が確認されただけで312件に上った。

 このため、各地の自治体も対応を強化。埼玉県では04〜05年、県が農業委などとの連名で、建設残土や産廃の不法投棄に警戒を呼びかけるチラシを農家全戸に配った。しかし、被害を食い止められないのが実情だ。【井上英介】

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081022-00000010-mai-soci