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2008年10月22日(水) 01時45分

狙われる携帯ショップ 最新機種窃盗、ネットで転売?産経新聞

 携帯電話ショップを標的にした窃盗事件が相次いでいる。狙われているのは未契約の携帯電話の本体。今週初めには神奈川県内の店に窃盗グループが侵入、グループの一部は警官が拳銃を発砲して制止するのを振り切って逃走した。機種や携帯電話会社によっては、盗品であっても、自分の携帯電話に付属しているICカードを差し込めば使用可能。携帯電話会社はショップの防犯などに神経をとがらせている。

 神奈川、茨城、埼玉の3県では昨年11月から今月にかけて計40件の携帯電話の窃盗事件が発生し、計約1900台が盗まれている。捜査関係者は、インターネットでの転売目的や、国外流出の可能性を指摘する。

 神奈川県内では20日未明、半径10キロの範囲で3件連続して発生。同日午前2時35分ごろ、平塚市内のドコモショップで、警戒中の平塚署員2人が、店内から4、5人の男が出てくるのを発見した。制止を呼びかけるとともに警察官が空に向けて発砲。さらに逃げようとする車両に向かって発砲した。けが人はなかった。応援で駆けつけた署員が、窃盗の現行犯で、男2人を逮捕した。

 約2時間前には秦野市内で計86台、約1時間前にも小田原市内で計84台が盗まれる事件が相次いでいた。

 また、県内では同様の窃盗事件が7月から今月までに計6件発生しており、全9件で約550台が盗まれた。いずれも大半が電話番号などの個人情報が入っていない最新機種。捜査幹部は「インターネットで転売する目的で盗んだ可能性が高い」とみている。

 茨城県内では先月から今月にかけて、NTTドコモ端末の窃盗事件が4件発生。被害は407台、総額約2000万円にのぼる。

 県警によると、被害があったのは県南西部の古河市や坂東市などの国道に面した店舗で、「東京からも1時間以内で来られる地域」(捜査関係者)。4件とも深夜に鍵をこじ開けて侵入し、十数分間で犯行を行うなど手口も共通しており、県警は同一犯による犯行とみて捜査している。

 「海外で日本製の携帯電話端末の需要は高く、闇ルートで国外に流出しているのでは」と、ある捜査関係者は指摘する。窃盗犯の背後に、盗んだ携帯電話を売買する人間が存在するとみられ、「組織的犯行の可能性が高い」(県警幹部)とみている。

 県警は、20日に男2人が逮捕された神奈川県平塚市の事件と手口が似ていることなどから、関連を捜査する。

 埼玉県でも県東部の越谷市を中心に昨年11月から今年9月までの10カ月間で、27件の窃盗事件があり、979台が盗まれた。被害総額は約5300万円。県警によると、被害の約95%に当たる937台がNTTドコモで、ソフトバンクは42台、auはゼロだった。


■狙われるドコモ、ソフトバンク ICカードがアダ


 狙われた携帯電話は、NTTドコモとソフトバンクの「第3世代」と呼ばれる機種が中心。これらの機種は、SIM(シム)と呼ばれる所有者の情報を記録したICカードを抜き差しすれば、複数の機種を使い分けることができる。

 ソフトバンクモバイル広報部によると、同社は全国約2700の販売店に対し、(1)閉店時に商品は金庫に入れる(2)防犯カメラを設置する−などの盗難対策を求めてきた。

 ネットオークションで「白ロム」など発売間もない端末が流通していることについては、「不正入手された可能性もあるので、オークションを運営する企業に取り扱いを控えるようお願いしている」と広報部。実際に、オークション最大手で同社系列のヤフーでは、発売から6カ月以内の商品の出品を見合わせている。

 神奈川県内などで被害にあったNTTドコモ広報部は、「各代理店では顧客情報も扱っているため、情報管理の徹底という観点からもセキュリティーの徹底は常に求めている」と対策を強調、「盗品が流通することは当然、好ましくない」と話す。

 両社の関係者からは「窃盗の対象にされることを機種のせいにされても…」と当惑する声も聞かれた。

 一方、KDDIのauは、販売店でICカードのロック解除が必要なこともあって、窃盗被害が少ない。KDDI広報部は「被害報道が増えているため、代理店にはセキュリティーの徹底を含め注意を呼びかけている」と話している。


■背景に販売方法の見直し


 相次ぐ携帯電話の大型窃盗事件。その背景として、携帯電話の販売方法が近年見直され、短期間で新機種に変更する携帯ユーザーの負担が以前より増したために、「白ロム」と呼ばれる未契約端末を販売店以外で入手する方法が新たに広まったことを指摘する声もある。

 「0円」「1円」の値札が珍しくなかった以前の携帯電話販売では、携帯電話会社は販売店に高額の販売奨励金を支払うことで「破格値」を実現していた。

 これに対し、携帯電話会社が高額な基本料金や通話料で奨励金を回収しているとする指摘があり、同じ機種を長く使い続けるユーザーにとって不利になることから、総務省が販売方法の見直しを各社に要請。現在、携帯電話会社は端末代金を5万円前後にまで引き上げる一方で、月々の通話料金を安く抑えるプランを主力商品としている。

 携帯ジャーナリストの石川温さんは「これまで見えなかった携帯端末の代金が見えるようになったことで、端末が『高い』とユーザーに伝わり、白ロムのニーズが出てきた。若い人には2年の月賦で契約しても生活のツールなので、1年で替えたいという意識が出てくる」と指摘する。

 例えば、高額の端末を月賦で購入し、1年で機種変更したくなった場合、販売店で変更すると、新旧両機種の月賦を支払う必要がある。

 ネットオークションなどで手に入る白ロムならば、手間はICカードを差し替えるだけで、端末代金も店頭価格より安い。短期間で機種を替えたいユーザーには、携帯電話会社の販売ルールを破っていても、なお魅力があるという。

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