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2008年10月22日(水) 12時11分

CPUとプラットフォームに見るPC秋冬モデルのトレンド+D PC USER

 2007年1月にWindows Vista搭載PCが発売されて1年8カ月が経過した。2008年3月には信頼性や互換性、パフォーマンスを改善したSevice Pack 1が公開され、Vistaの成熟度も上がっている。一方、ノートPCの性能も着実に進化し、デュアルコアCPUがローエンドモデルにまで普及したり、チップセット内蔵のグラフィックス機能もBlu-ray DiscやHDコンテンツの再生が行えるCentrino 2やPumaといったプラットフォームが、各社の主力ノートPCに登場しつつある。

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 2007年当初は、シングルコアCPUに512MバイトのメインメモリというノートPCにWindows Vista(Home Basic)を導入したモデルも散見されたが、今ではメモリ価格の下落もあって、シングルコアCPUを搭載したエントリーモデルでさえ2Gバイトのメモリを備えているのが当たり前だ。国内PCベンダー製のデュアルコアCPU搭載ノートPCが、10万円台前半という比較的手ごろな価格で買えるようになったのも2008年のトピックだろう。ハードウェアとソフトウェアの両面でWindows Vistaを快適かつ安心に、そして手軽に使える環境が整ってきたといえる。

 そのような状況の中で、2008年のPC秋冬モデルが続々と登場している。フルモデルチェンジを果たした富士通や東芝の主力ノートPCでは、最新プラットフォームを導入しつつも、シングルコアCPU(Celeron)採用モデルがFMV-BIBLO NF/B40シリーズやdynabook AXシリーズなど一部のラインアップに残っているが、全モデルでデュアルコアCPUと2Gバイトのメインメモリを搭載してきたのがNECだ。ちなみに、ソニーも大半のモデルで最新プラットフォームとデュアルコアCPUを採用したが、一部の店頭モデル(VAIO type S)でCeleron搭載機が残っている。

 NECの主力ノートPCといえば、何といってもLaVie Lシリーズだ。インテルプラットフォームの上位モデル「LaVie L アドバンストタイプ」、AMDプラットフォームでカラーバリエーションモデルも展開する「LaVie L スタンダードタイプ」で構成される。後者はAMDの最新モバイルプラットフォームの「Puma」(開発コード名)を大胆に導入したほか、エントリーモデルの「LaVie L LL370/RG」にもデュアルコアCPU(Athlon X2 TK-55)を採用したのがトピックだ。価格が実売17万円〜11万円台と手ごろに収まっているのも見逃せない。

 一方、フラッグシップの「LaVie C」シリーズもフルモデルチェンジを果たし、インテルの最新プラットフォーム「Centrino 2」準拠となった。液晶ディスプレイが15.4型ワイドから16型ワイドに大型化し(画面解像度は1366×768ドット)、ボディが高級感あふれるブラック基調になったのも注目だ。

●次世代のCPUとチップセットが続々登場

 AMDのPumaプラットフォームは、2008年6月のCOMPUTEX TAIPEI 2008で発表されたもので、開発コード名は「Puma」と呼ばれていた。インテルのCentrino/Centrino 2のように正式にプラットフォーム単位でブランドを展開しているわけではないが、CPU、システムバス、チップセットといった中核部分が新世代に生まれ変わり、従来のAMDモバイルプラットフォームに比べて、チップセットに統合されたグラフィックスやデータ転送速度、省電力関連機能の強化が特徴だ。

 組み合わされるCPUは、開発コード名「Griffin」の名で呼ばれていたモバイルPC向けの新ブランド「Turion X2 Ultra/Turion X2」で、システムバスと省電力関連の機能が強化されている。内蔵する2つのコアとメモリコントローラ部分は独立して電力を制御でき、2つのCPUコアは、コア単位で負荷に応じて動作クロックとコア電圧を細かく変化させて無駄な電力消費を削減する。また、システムバスはHyperTransport 3.0に対応し、データ転送速度が最大14.4Gバイト/秒(3.6GHz)に高速化されたほか、転送量によってバス幅を5段階に可変させることで消費電力を節約する機能も加わっている。

 Turion X2 Ultraの2次キャッシュはトータル2Mバイト、Turion X2は1Mバイトとなり、LaVie L LL570/RGに採用されているのは2.0GHz駆動のTurion X2 RM-70だ。LaVie L LL550/RGが搭載しているAthlon X2 QL-60(1.9GHz)は、Turion X2 Ultraの廉価版として用意されているCPUで、HyperTransport 3.0には対応しているが省電力関連の機能は簡略化されており、エントリーモデルのLaVie L LL370/RGが搭載するAthlon X2 TK-55(1.8GHz)はHyperTransport 3.0に非対応で、2次キャッシュも512Kバイトに減っている。

 一方、中核モデルのLaVie L LL570/RGとLaVie L LL550/RGシリーズが採用するチップセットのAMD M780Gは、RS780Mの開発コード名で呼ばれてきたもので、AMDが2008年3月4日に発表したデスクトップPC向けのグラフィックス内蔵チップセット「AMD 780G」のノートPC版だ。サウスブリッジのAMD SB700とはHyperTransport 3.0で接続される。AMD M780Gが内蔵する「Mobility Radeon HD 3200」グラフィックスコアは、DirectX 10をサポートし、内蔵グラフィックスとしては高いレベルの3D描画性能を持つほか、H.264/MPEG-2/VC-1のハードウェアデコード機能を備えるUVD(Unified Video Decorder)を内蔵しており、Blu-ray DiscなどのHDコンテンツも低いCPU負荷で再生できる。動画の外部出力に必要な著作権保護技術「HDCP」にも対応しており、LL570/RGとLL550/RGシリーズはAMDの提唱する「AMD HD! エクスペリエンス」にも対応してHDMI端子を標準装備するほか、LL570/RGではBD-ROMドライブを装備して気軽に高画質なBDタイトルを楽しめるのがポイントだ。なお、上記のLaVie Lシリーズは、AMD M780Gと外付けGPUを連携させてマルチGPUを同時利用する「Hybird CrossFireX」はサポートしない。

 対するインテルの新モバイルプラットフォーム「Centrino 2 プロセッサー・テクノロジー」は、Montevinaという開発コード名で呼ばれていたもので、2008年7月に正式発表された。45ナノメートルプロセスルールによるCPU(開発コード名:Penryn)と、Intel GM45/PM45 Expressチップセット、WiFi Link 5000番台シリーズの無線LANモジュールの組み合わせで提供される。AMD M780Gと同様、Intel GM45内蔵のグラフィックス機能(Intel GMA 4500MHD)は従来のMPEG-2に加え、ハードウェアによるVC-1とH.264の動画再生アクセラレーション機能が加わり、外付けGPUを頼らずにBlu-ray Discの再生が可能になった。

 ちなみに、LaVieシリーズでCentrino 2に対応したのはフラッグシップモデルのLaVie Cシリーズで、LaVie Lシリーズの最上位モデルLL750/RGは従来のCentrinoプラットフォームを採用する。また、富士通は主力ノートPCのFMV-BIBLO NFシリーズの中上位モデルで、東芝はdynabook TXシリーズの全モデルでCentrino 2を採用した。

●デュアルコアCPU搭載機が有利だがプラットフォーム別では意外な差も

 それでは、LaVie Lシリーズを中心にデュアルコアCPUとシングルコアCPU、そして新旧のモバイルプラットフォームを比較しよう。今回は、LaVie Lシリーズの4モデルをベースに、Centrino 2対応のLaVie C LC950/RGと、シングルコアCPU搭載の最新鋭機dynabook AX/53G、旧世代モデルとしてGateway MT3303j(1.8GHz駆動のSempron 3500+)とHP Notebook PC G7000改(1.73GHz駆動のCeleron 530/メモリ容量を標準の512Mバイトから1Gバイト×2の2Gバイトに増設)を利用した。LaVie L LL750/RGはCentrinoプラットフォーム、LaVie L LL570/RGとLaVie L LL550/RGはPumaプラットフォーム採用モデルという位置付けだ。

 ベンチマークテストはPC USERでおなじみのもので、CPUやメモリ、グラフィックス、HDDなどシステム全体のパフォーマンスを計測するPCMark05 1.2.0、DirectX 9.0c世代の3D描画性能を測る3DMark06 1.1.0、DirectX 8.1世代のゲームがベースになっているFINAL FANTASY XI Official Benchmark 3 Ver.1.0を使った。

 テストの結果を見ていくと、総じて予想通りデュアルコアCPUや新型プラットフォーム採用モデルの成績が伸びている。特に顕著なのはPCMark05で、Sempron 3500+(1.8GHz)を搭載したGateway MT3303jやCeleron 530(1.73GHz)搭載のHP Notebook PC G7000改は振るわず、すべての項目でデュアルコアCPUのAthlon X2 TK-55(1.8GHz)を備えたエントリーモデルLaVie L LL370/RGを下回っているのが分かる。dynabook AX/53Gは動作クロックが2.13GHzと高いため、個別のテストではLL370/RGを上回っているのもあるが、総合スコアではかなわない。

 プラットフォーム別では、Centrino 2のLaVie C LC950/RG、CentrinoのLaVie L LL750/RG、そしてPumaのLaVie L LL570/RGおよびLaVie L LL550/RGという順になる。LaVie C LC950/RGは外付けGPU(NVIDIA GeForce 9600M GS)を内蔵していることもあってスコアはケタ違いに高く、最上位モデルの実力を遺憾なく発揮している。また、Pumaプラットフォーム搭載モデル機はCPUの動作クロックがCentrino 2やCentrino搭載モデルに比べて低い割にGraphicsの値が健闘しており、両機ともCPUクロックが高速なCentrinoモデル(LaVie L LL750/RG)を上回っている。グラフィックス機能が強化された新型プラットフォームの面目躍如といえるだろう。

 その傾向は3DMark06で一層現れており、Pumaプラットフォームを搭載したLaVie L LL570/RGとLaVie L LL550/RGの総合スコアが、より高速なCPUを備えたLaVie L LL750/RG(Celeron)を上回っているのが確認できる。さすがに最新の3Dゲームは荷が重いが、FFベンチの結果からも分かる通り、ライトなゲームであればノートPCでもゲームタイトルを楽しめるはずだ。特にLaVie L LL570/RGはFFベンチのHigh(高解像度)で「3253」、LL550/RGは「2655」と、公式サイトのガイドラインでは「とてつよPC」/「つよPC」と表現される値であり、このレベルのゲームなら十分快適にプレイ可能だ。試しに「戦国無双2 ベンチマーク」を行ったところ、LL550/RGは低グラフィック測定で平均フレームレートが「47.9」、メモリを増設したHP Notebook PC G7000改で「17.6」と、一昔前の内蔵グラフィックス性能とは違う次元にあるのが分かる。

 Windowsエクスペリエンスインデックスは順当なもので、プロセッサやメモリはコア数や動作クロック、デュアルチャネル動作などが素直に反映され、グラフィックスやゲーム用グラフィックスはLaVie C LC950/RGやLaVie L LL550/RGといった最新プラットフォーム機が有利だ。

●やはりVistaの快適動作にはデュアルコアCPUが必須

 Windows Vistaではスパイウェアやウイルスの侵入を防止するWindows Defender、Windowsサイドバーのミニアプリなど、ユーザーが何も操作していないようなときでもプログラムがいくつも走っており、シングルコアCPUでは荷が重い。512Mバイトのメモリを搭載した標準状態のHP Notebook PC G7000ではWindows Vistaの起動だけに110秒もかかり、これを2Gバイトに増設すると65秒に減るものの、バックグラウンドでウイルススキャンなどが開始されるとたちまちレスポンスが悪くなる。やはりマルチタスク環境では、メモリをいくら増設してもシングルコアCPU搭載機はデュアルコアCPU搭載機のスムーズな操作性にはかなわない(もっとも、デュアルコアCPU搭載モデルのメモリ容量も重要だが)。

 プラットフォームでは総合スコアでこそ最新のCentrino 2が優位だが、ライトなオンラインゲームなどではPumaプラットフォームに分がある。ともあれ、このクラスのPCを求めているユーザーはメールやWebブラウズが中心であり、その点では劇的な差が生じるわけではないので、予算やデザイン、カラーリングなど好みの応じてモデルを選ぶといいだろう。

 本記事の冒頭で述べた通り、Windows Vistaの導入障壁は確実に下がりつつある。まだまだメインPCにはWindows XPを使用しているユーザーが大半かと思うが、次にPCを買い換えるのであれば新しいVistaを、と考えているケースが多いのではないだろうか。デュアルコアCPU搭載機が10万円前半で気軽に買えるようになった今、どうしても予算が足りない場合を除き、あえてシングルコアCPU搭載モデルを買う理由は見当たらないし、結果的に安物買いの銭失いになりかねない。

 また、CeleronやSempronといった旧世代のPCを所有しているユーザーも、デュアルコアCPUで2Gバイトのメモリを搭載したイマドキのPCを購入すれば、動作が重いといわれるWindows Vistaも大きな不満なく扱えるのではないだろうか。本記事がその一助になれば幸いだ。

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