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2008年10月21日(火) 10時19分

秋、感動のステージ、間もなく千秋楽Oh! MyLife

 10月23日の千秋楽まで後3日ほどとなった。先日、機会があって帝国劇場で7月から上演されているミュージカル「ミス・サイゴン」を観た。

 この「ミス・サイゴン」、9月4日には日本での通算上演回数が1000回を迎えたという息の長いミュージカルだ。自分自身、何年も前の冬にニューヨークのブロードウエイかいわいを歩いた時には、この「ミス・サイゴン」の上演劇場の前をうろちょろしたり、当日券を半額で売る、ニューヨークの有名なチケットブース「TKTS」の行列に並んだりしたものの、結局、外国でも日本国内でも今まで一度も観る機会がなかった。

 さて、ここで、この大作ミュージカルをまだ1度も観たことがないという、(記者のような)不幸な読者のために、簡単に物語のあらすじについて。

 舞台はベトナム戦争で荒れる陥落寸前の旧サイゴン(現在のホーチミン・シティ)市内のキャバレーでのアメリカ兵クリスと17歳のベトナム人少女・キムとの出会いから始まる。貧しい家庭に生まれたキムとベトナム戦争に疑問を持ちながらも参戦しているクリス。二人の愛が深まるまでに時間はそうかからなかった。

 しかし、永遠の愛を誓う二人の間を引き裂くように、戦争が終わりを告げようとする。サイゴン陥落の混乱の中、米兵救出のヘリコプターが飛んできて、2人は離ればなれになる。

 その後、キャバレーの経営者、通称エンジニアとともに、隣国タイのバンコクに逃れたキムは、バンコクの歓楽街パッポン通りで必死に働き、クリスが迎えに来てくれることをひたすら待ち続ける。この時、キムはクリスの帰国後に産まれた息子のタムと一緒だった。

 そのころ、米国に戻ってからもベトナム戦争の精神的な後遺症で悩むクリスは、別な女性エレンと結婚。新しい生活を始めるが、間もなくして、戦友のジョンから、キムが生存していることや、クリスとキムとの間の息子タムの存在について知らされる。その後、キムと息子のタムを探すために、クリスとエレン、そしてジョンがバンコクに向かい、物語は佳境に入る。

 今から十数年前、歌手の故本田美奈子がキム役を演じ、一躍有名になったこのミュージカルだが、感動で涙を流してばかりはいられない。

 記者の観た日のキム役はソニンだったが、なかなかいい演技をしていて感動的だったし、観客は実物大のホーチミン像、実物大のヘリコプターやキャデラックといった乗り物がステージ上に次々に登場する大型の舞台装置にも土肝を抜かされる。

 幕の合間の休憩時間には、オーケストラの指揮者や演奏者が気さくに観客と談笑する姿を目にしてとてもほほ笑ましく思ったし、カーテンコールの後には、役者たちが会場出口に集まって観客を見送る様子にも驚いた。このミュージカルがここまでロングランでこられたのは、ひょっとしたら、役者やスタッフたちの観客本位の姿勢に秘密があるのかも知れない。

 普段はなかなか舞台芸術に触れることのない記者に、このすてきなミュージカルとの出会いのチャンスを下さった帝劇のMさんにも心からお礼を言いたい。

 なお、舞台は来年1月から福岡の博多座に移る予定だ。

(記者:横浜 あきら)

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081021-00000003-omn-ent