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2008年10月21日(火) 16時20分

国内の「売り手市場」終焉か 金融危機の影響で大卒内定が減少MONEYzine

 近年続いていた国内の「売り手市場」に変調の兆しが見られる。米国から始まった世界同時株安、金融不安は好調だった日本の雇用状況にも影響を及ぼし始めた。

 日本経済新聞社が19日に報道した2009年度の採用状況によると、主要企業の大卒採用内定者数(09年春入社予定)は今春入社した人数に比べて1.4%減で5年ぶりのマイナスになった。製造業は5年連続で増えたものの、米国発の世界金融危機の影響もあり、証券や保険、不動産が落ち込み非製造業がマイナスに転じている。さらに今後景気の落ち込みにより、業績悪化が懸念されることから10年春入社の採用計画については全体の7.6%が「採用を減らす」と回答しているという。

 証券や保険、不動産などにおいて雇用が収縮しているのは日本だけではない。国際労働機関(ILO)は20日、金融危機の世界経済への影響により、2009年末までに2000万人の雇用が失われる可能性があるとの見通しを発表した。ILOは特に建設、不動産、金融サービスが影響を受けるとし、国際通貨基金(IMF)が今後経済見通しを引き下げた場合、失業者数はさらに増加する可能性を示唆した。また、ILOは自動車部門の失業者も増えると予測している。すでに米国では自動車大手ゼネラル・モーターズ(GM)はミシガン州などの国内の工場閉鎖により4000人以上の人員削減方針を明らかにしている。個人消費の冷え込みで販売が低迷したためだ。

 非製造業に比べ、日本国内の自動車などの製造業は強気の採用を続けているが、トヨタ自動車九州(福岡県宮若市)では今年度の生産計画を前年度比16%減に引き下げ、日産自動車も九州工場で大型車を15%減産する予定だ。金融危機がさらに実体経済に影響を及ぼし、個人消費の落ち込みが続けば、自動車業界も当然、大卒内定者数の縮小、リストラの実施につながることは必至だ。

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