記事登録
2008年10月20日(月) 17時40分

日本経済に忍び寄る「コンプライアンス不況」の正体とはMONEYzine

「コンプライアンス不況」が日本経済に深刻なダメージを与えているとの見方が一部の経済専門家の間で強くなっている。コンプライアンスとは法令順守のことで、ビジネス用語として使われる場合は、企業が法律や規則などのごく基本的なルールに従って活動を行うことを指す。近年、コンプライアンスの重要性が叫ばれるようになった背景には、違法行為や反社会的行為を行って、消費者や取引先の信頼を失う企業が頻発したためだ。

 企業は当然、法令順守すべきで、全国にコンプライアンスの重要性が浸透しつつあるが、一方でコンプライアンスが日本経済を停滞させているという指摘が存在するのも事実だ。金融コンサルタントの木村剛氏、慶應大学教授の竹中平蔵氏を代表とした経済専門家の間ではこの現象を「コンプライアンス不況」と呼んでいる。

 コンプライアンス不況は、法令で規制が過度に強化されてしまうことで、これを遵守しようとするために企業活動が萎縮してしまい、結果、経済全体が停滞してしまうことだ。特に影響が叫ばれているのが住宅だ。2005年に発覚した構造計算書偽装問題(姉歯事件、耐震偽装)を受けて、2007年6月に施行された「改正建築基準法」は大きな混乱を招いた。国土交通省が定めた新規住宅のチェックが実務とかけ離れて厳しくなり、また周知徹底も遅れたため、建設が遅れ、住宅着工数が激減、経済成長を阻む要因となってしまった。原油や鋼材価格の上昇など需要の減退要因は他にもあるが、コンプライアンス不況が建設業界の倒産ラッシュや、住宅と関係が深い耐久消費材の需要の落ち込みを誘引したとの見方は強い。

 他にも象徴的な例が、2007年9月に施行された「金融商品取引法」だ。金融機関による投資家へのリスクが高い金融商品を販売する際の「説明責任」が行き過ぎとも言えるほど厳しくなり、金融機関・投資家の両方の活動を麻痺させてしまった。また会計監査制度の充実と企業の内部統制強化を目的とした「日本版SOX法」への対応によるコスト負担増、体制整備へのとまどいが企業の上場を減退させているという指摘もあり、コンプライアンスという美名のもとに、規制を増やし、厳しくした結果、経済停滞の一因となってしまっている。世界的に信用が収縮している中、やみくもに規制を増やしていくとがはたして国民生活の利益になるのか検討する必要に迫られている。

【関連記事】
世界同時不況の懸念が現実に 金融危機が実体経済を侵食
止まらぬ株安 私たちの生活への影響はどの程度か
世界屈指の富裕国アイスランドが崩壊 金融依存の国家経営に脆弱性が露呈
金融危機により日米欧で時価会計の見直し検討 そもそも「時価」と「簿価」の違いとは
ブラック・マンデーを上回る衝撃 なぜ株式市場は大暴落したのか

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081020-00000000-sh_mon-bus_all