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2008年10月20日(月) 00時00分

健保の書類操作し隠ぺい 年金改ざんで社保事務所中国新聞

 厚生年金の記録改ざん問題で、各地の社会保険事務所が不正の発覚を免れるため、健康保険の関係書類を抜き取るなどの隠ぺい工作をしていたことが二十日、社会保険庁の職員や元職員の証言で分かった。

 改ざんでは、手口の一つとして、過去にさかのぼって従業員を厚生年金と健康保険から偽装脱退させる方法がある。会社は保険料負担を減らすのが目的で、社保事務所は納付率を上げられるというメリットがあるが、従業員は将来の年金受給額が減ってしまう上、医療でも無保険状態となる。

 職員らによると、健康保険の書類操作は十年ほど前まであったとみられる。記録改ざんは主に中小企業で行われていたが、中小企業の多くは社保庁が運営する政府管掌健康保険(今月から「全国健康保険協会管掌健康保険」に移行)に加入していたため、つじつまを合わせていた。

 例えば、ある従業員が九月に医療機関を受診したが、十月に会社が一年さかのぼって、政管健保から脱退させると、医療費は窓口負担(現行三割)だけでなく、全額を自己負担しなければならない。

 受診から二—三カ月後、医療費を請求する診療報酬明細書(レセプト)が医療機関から社保事務所に到着。社保事務所は本来なら残り七割分を従業員に請求するが、偽装脱退が発覚してしまうため、レセプトを抜き取り、政管健保の財政で肩代わりしていたという。

 五十代のある職員は「記録改ざんを行う徴収課員と、レセプトを点検する給付専門官の間でこうしたやりとりがされていた」と証言。関西地方の別の元職員は「抜き取ったレセプトを挟み込んだ書類は所長まで決裁に回っていたが、黙認されていた」と指摘した。

http://www.chugoku-np.co.jp/News/Sp200810200350.html