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2008年10月20日(月) 19時13分

景気の基調判断を「弱まっている」に下方修正=10月月例経済報告ロイター

 [東京 20日 ロイター] 政府は20日、10月の月例経済報告を発表し、景気の基調判断を「弱まっている」に下方修正した。下方修正は2カ月ぶり。景気の先行きについても、より警戒感を持った表現に変更した。 
 景気の先行きは「当面、世界経済が減速するなかで、下向きの動きが続くとみられる」とし、米欧における金融危機の深刻化や景気の一層の下振れ懸念などを背景に「景気の状況がさらに厳しいものとなるリスクが存在することに留意する必要がある」とした。 
 内閣府幹部は、景気について「下向きの動きが一層明確になった」との認識を示した。10月の景気の基調判断「弱まっている」は、月例経済報告の開始以来初めて使われる表現。9月の表現は「このところ弱含んでいる」だった。
 ITバブル崩壊後の景気後退期(2000年後半─02年始め)に「悪化」という表現が使われていたが、10月の判断はそれ以来の弱い表現となる。
 判断を「悪化」ではなく「弱まっている」にとどめた根拠として、内閣府幹部は「現状は個人消費の項目で、消費総合指数が横ばい圏内で動いている指標もあり、全面的には悪くなっていない」と指摘。ITバブル崩壊時は米国の景気後退の影響を受けたが、「当時と比べると今は新興国のウエートが高く、それなりにまだ拡大している」との見方を示し、調整の仕方は01年に比べると緩やかと判断している。 
 内訳をみると、個人消費、輸出、鉱工業生産、業況判断、倒産、雇用の6項目が9月から下方修正された。上方修正された項目はなかった。内閣府によると、同時に6項目を下方に修正したのは1998年4月以来。当時は現在の全11項目のうち公共投資と倒産を除く9項目で判断していた。 
 経済の最大項目である個人消費は、9月の「おおむね横ばいとなっている」から「おおむね横ばいとなっているが、足下で弱い動きもみられる」に修正された。下方修正は07年10月以来1年ぶり。家計調査など需要側統計と鉱工業出荷指数など供給側統計を合成した消費総合指数は、おおむね横ばいと判断しているが、百貨店販売額や新車新規登録・届出台数など個別の販売側統計で弱い動きがみられるという。下方修正は、消費者マインドが悪化し、所得が弱い動きになっていることを考慮した。先行きについては、株価が大幅に下落していることなどから、注視が必要であるという。 
 輸出は9月の「弱含んでいる」から「緩やかに減少している」に修正された。アジア向け、EU向けは横ばいになっているものの、米国向け輸出が輸送用機器を中心に減少したことを考慮。内閣府幹部は「米国の減速の影響が色濃く出た」と判断している。先行きについても、世界経済が減速するなかで、当面弱い動きが続くと見込んでいる。
 生産についても「緩やかに減少している」から「減少している」に修正された。8月の鉱工業生産指数は、前月比3.5%減と大幅に減少。この内訳は北米向けの輸送機械、国内外向けで一般機械など。設備投資の弱含みや輸出の減少が生産の減少に影響している。先行きについては、需要が弱く、在庫率も高まっていることなどから、当面弱い動きが続くと見込んでいる。 
 企業の業況判断は、9月の「一段と慎重さが増している」から「悪化している」に修正された。日銀が発表した全国企業短期経済観測調査(日銀短観)で、大企業製造業・業況判断指数(DI)がマイナスに落ち込んだことなどを考慮した。 
 倒産件数ついても「緩やかな増加傾向にある」から「増加している」に修正された。9月の企業倒産件数が前年比34.4%増の1408件と大幅増となり、負債金額が5兆3625億円と8月の8679億円から急増したことなどを考慮した。東京商工リサーチによると、9月の負債金額は戦後2番目の高水準。経営破たんした米投資銀行のリーマン・ブラザーズ<LEHMQ.PK>の日本法人であるリーマン・ブラザース証券が民事再生法の適用を申請、関連3社を含む負債総額が4兆6957億円に上る戦後2番目の大型倒産となったことで、負債総額が急増した。 
 雇用情勢は9月の「厳しさが残るなかで、このところ弱含んでいる」から「悪化しつつある」に修正された。雇用者数は横ばいで推移しているものの、完全失業率が上昇傾向となり、8月は前月比0.2%ポイント上昇の4.2%になったことなどを考慮した。先行きについて、内閣府幹部は「倒産が増加していることに留意する必要がある」と述べた。
 国内企業物価については、判断は据え置いたものの、表現を9月の「横ばいとなっている」から「緩やかに下落している」に変更した。 
 海外経済の見方については、世界経済が9月の「景気は、減速の動きに広がりがみられる」から「景気は減速している」に下方修正された。下方修正は2カ月連続。先行きについては「金融危機の影響により、一段の下振れリスクがある」とした。
 地域別では、米国が「景気は弱含んでおり、後退局面入りの懸念がある」から「景気は後退している」に下方修正された。下方修正は6カ月ぶり。アジアは9月の「中国等で景気は拡大が続いている」から「中国等で景気は拡大が続いているが、一部で減速の動きがみられる」に下方修正された。下方修正は03年9月以来5年1カ月ぶり。ヨーロッパについては「ユーロ圏及び英国では、景気が弱含んでいる」との判断で据え置かれた。ただ、先行きについては「金融危機の影響により、景気後退のリスクが高まっている」と警戒姿勢を強めた。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081020-00000095-reu-bus_all