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2008年10月20日(月) 02時30分

<農地違反転用>農業委員が工場用地に 宮城県も追認毎日新聞

 宮城県の旧小牛田(こごた)町(現美里町)で、現職の農業委員が自分の農地30アールを自ら経営する工場の敷地に無許可で転用し、県も追認していたことが分かった。農業委員は農地法に反する「違反転用」を監視する立場で、法的な歯止めが利いていない違反転用問題の根深さが浮かんだ。

 宮城県などによると、違反転用は04年10月、旧小牛田町税務課が行った課税台帳の現況調査で発覚した。町の農業委員だった60代の農家の男性が畑30アールをつぶし、自分が社長を務める菓子製造会社の工場と従業員用駐車場にしていた。

 一帯は良質のササニシキやひとめぼれの産地。農業振興地域整備法に基づく農業振興地域の農用地区域に指定され、転用が最も厳しく制限されていた。

 農業委員会は税務課の指摘を受けて原状回復を求めたが、男性はかたくなに拒んだ。町は発覚から約1年後に県に相談。県は既成事実化していることなどを理由に、男性から始末書を取って問題の農地を農振地域から除外し、転用を認めた。

 男性は発覚時まで、農業委員を15年間務めていた。農地に戻すよう説得した発覚時の農業委の会長は「まさかという思いだった。責任は感じているが、思い出したくない」と言葉少な。同席した当時の事務局長も「模範となる委員だからと何度も説得したが、聞いてくれなかった」と振り返る。

 農業委員会は、地方自治法や農業委員会法に基づき市町村単位で設置が義務づけられた行政委員会で、農地の売買や転用に際しての許認可事務を行う。農業委員の身分は特別職の地方公務員で、任期は3年。農家の投票で選ばれる公選委員と議会や農協などの推薦で選ばれる選任委員からなる。

 農地利用を監視する立場にありながら違反転用した男性は「町や県のご指導に従って転用手続きを取った。ルールからはみ出したのは事実だが、今さら何も言うことはない」と話す。原状回復に応じなかった理由については「回復を求められた記憶はない」としている。

 県は「始末書を出して反省しており、他の農地への影響も少ないことから追認した。追認に問題はなかった」と話している。【井上英介】

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