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2008年10月20日(月) 02時03分

被害者遺族の立場や心情に最大限配慮 JR脱線事故産経新聞

 □郷原信郎・桐蔭横浜大学法科大学院教授

 「今回の集団面談の実施は、被害者遺族の立場や心情に最大限配慮しようとする神戸地検の姿勢の表れと評価できる。従来の検察捜査では処分決定後に説明を行う程度で、捜査の中間段階でこのように大規模に被害者遺族との面談を行うことはなかった。刑事の過失責任の追及には限度があり、とりわけ企業の組織活動にかかわる事件の場合には多くの困難な要素がある。

 近年、業務上過失致死傷罪で事故当時の社長らが起訴された三菱自動車やパロマ工業の例など、従来の常識では考えられないほどに過失事件の起訴の判断が積極的な方向に変わってきている。だが、やはり現場カーブを急カーブに付け替えた際に当時法的には義務がなかった自動列車停止装置(ATS)の設置をしなかったことについてJR西日本幹部の過失責任を問うことは、予見可能性、結果回避義務などに関して非常に困難な面があることは否定できない。それだけに神戸地検は、事故から3年以上経過した後の社長室の捜索など異例の捜査手法まで用いて刑事責任追及に向けて最大限の努力をすることに加え、捜査の過程においても被害者遺族に可能な限りの誠意を尽くそうとしているのではないか。

 同じ神戸地検が捜査した平成13年の明石歩道橋事故では、当時の明石署長らの不起訴をめぐって遺族から強い反発を受け、最高検も巻き込んだトラブルにも発展した。今回の面談実施には、その経験が生かされているのだろう。『検察の正義』を振りかざして上から下を見下ろすような、かつての検察の姿勢では被害者遺族からの反発は免れない。フラットな関係を築くことが捜査と処分について被害者遺族の理解を得ることにつながるはずだ」

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