2008年10月19日(日) 12時04分

米大統領選、キリスト教福音派の見方は　ジム・ブラッドフォード牧師（産経新聞）

　ブッシュ米大統領が２０００年と２００４年の選挙で当選する原動力ともなったキリスト教福音派（エバンジェリカル）は今回の大統領選をどうみているのか。共和党副大統領候補サラ・ペイリン・アラスカ州知事が通っていたアセンブリーズ・オブ・ゴッド教団のジム・ブラッドフォード牧師に聞いた。（ミズーリ州スプリングフィールド　有元隆志）

　−−共和党候補マケイン上院議員はブッシュ大統領と比べると信仰心を強調していない。教会メンバーはマケイン氏をどのようにみているか

　「マケイン上院議員の信仰について、われわれは多くは知らない。地元アリゾナ州のバプティストの教会に通っているというが、ブッシュ大統領ほど信仰心を公にはしていない。マケイン議員は共和党のなかでは保守派に属していない。ペイリン知事が指名される前までは、福音派の間でも意見が分かれていた。

　ブッシュ大統領に対する失望も大きかったこともある。民主党候補のオバマ上院議員支持に流れている人もいた。ペイリン知事の副大統領候補指名で、マケイン議員は福音派の多くを引き戻した」

　−−ペイリン知事はアラスカ州で教団の教会に通っていたが

　「ペイリン知事に対する教会メンバーの親近感は強い。知事の考え方は福音派そのものであり、彼女が指名されたことで教会メンバーたちの動きも活発となった。ペイリン知事はレーガン元大統領のように低い税金、強い国防政策をとる保守派とみられている」

　−−教団はスプリングフィールドに本部をおいている。本部と各教会との関係は

　「アセンブリーズ・オブ・ゴッド教団は全米に１万２０００の教会を持ち、信者は約２５０万人いる。ただ、各教会は独立している。教団は牧師に対する試験を実施し、指導する許可を与えるが、牧師がどうすべきかなどと指示はしない。それぞれの教会が資産を持ち、牧師を選ぶ。ペイリン知事は地元の教会を離れたが、新しい牧師がそれほど保守的でなく、居心地がよくなかったのかもしれない」

　−−オバマ上院議員に対する教会メンバーの見方は

　「オバマ上院議員は著書でも書いているように、キリスト教への信仰心を持っていると、多くの福音派も思っている。ただ、オバマ議員が通っていたシカゴの教会を取り巻く論争は、福音派を混乱させる。オバマ議員はシカゴの教会でキリスト教信仰に目覚め、ジェレマイア・ライト師を信仰の師と仰いだと言っている。ところが、ライト師の過激な発言は理解に苦しむ。われわれはライト師をよりリベラルな見方をする人としてみている」

　−−スプリングフィールドは、ミズーリ州の他の地域とは違うか

　「セントルイスやカンザスシティーはリベラルな土地柄であるのに対し、スプリングフィールドは非常に保守的だ。有権者にとって、妊娠中絶、結婚の定義の道徳的価値観は非常に重要な意味を持つ。また、愛国心が強く、自由を世界に広めることを支持している。

　われわれは政府の役割がより増すと、社会主義的な傾向が強まり、究極的には宗教を迫害するのではないかと懸念している。共和党は民主党ほどにはそうした道を歩まないと多くの福音派がみている」

　−−金融危機による経済問題が、選挙戦の最大の争点となっているが、この地域でも同様か

　「多くの福音派は道徳的価値観のほうが、経済よりも重要だと思っている。経済について言うと、われわれは神を信じるように教えられている。神がわれわれを導く。多くの人は年収の１０％を教会や神のための仕事に寄付している。苦しんでいる人がいれば、ある程度まで財政支援をしている。

　オバマ議員とマケイン議員のどちらがより上手に経済運営をするか議論が分かれるだろう。この教会でもそうだ。ただ、投票に行く際は、道徳的価値観が経済問題よりも優先する。この地域では大半の有権者はマケイン議員を支持すると思う。経済問題よりも、この国が道徳的にどの方向に向かっているかのほうを多くの人が心配しているからだ」

　−−なぜこの地域は州内のほかの地域と異なるのか

　「２０世紀はじめ、精神的な復興がミズーリ州の南西部、アーカンソー州の北部の小さな町々でおきた。この地域の多くの教会が始まったのが２０世紀はじめからで、その子孫たちが伝統を受け継いできた。多くの教会があり、福音派が多く住んでいるのでこの地域はより保守的となった」

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