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2008年10月19日(日) 09時40分

金融危機により日米欧で時価会計の見直し検討 そもそも「時価」と「簿価」の違いとはMONEYzine

 世界的な金融危機により市場が混乱している中、米国では時価会計凍結を検討、欧州では見直し策を打ち出すなど世界同時不況に陥るのを防ぐため、欧米の動きが活発になっている。

 日本でも16日、民間の企業会計基準委員会(ASBJ)が時価評価の対象外になる範囲を拡大するなど会計基準を見直す検討を始めた。年内にも改正案をまとめる見通しで、最終的には金融庁が金融商品取引法の関係政省令で決定する。適用時期は未定だが2009年3月期から適用との見方もある。

 金融システムの混乱を沈めるため、日米欧が同時に時価会計の見直しの検討に入っているが、そもそも「時価会計」とはどのようなものを意味するのか。時価会計とは企業が保有する株式、債券などの金融資産を、時価で再評価する会計手法のことだ。仮に1年前に100万円で購入した株式が、決算時点で値上がりして300万円になった場合には、簿価で会計を行う場合は貸借対照表にそのまま100万円と記載するが、時価の場合は300万円を表示するので、実際の取得価格100万円よりも、200万円の含み益が発生する。一方でその株式が取得価格よりも下がってしまった場合は、含み損が発生する。

 本来、時価会計は会計の透明化、つまり企業の財政を正しく反映するために採用されてきたのだが、サブプライムローン問題以後、一部適用停止を訴える動きが出ている。時価会計だと評価損が著しい金融商品を保有している金融機関などの損失がさらに膨らみ、いっそうの信用収縮につながるからだ。金融不安が覆う現在のような特殊な状況の中、「評価損によって不安が増幅し、さらなる評価損につながる」「株価の下落によって金融機関の収益や資本が動いてしまうのは望ましくない」といった意見も増えている。

 欧米で時価会計の見直し検討が始まると、国内の金融業界からも「日本の金融機関だけ厳しいというのはおかしい。金融当局は、欧米の金融機関と足並みをそろえてやってほしい」などの声が大きくなり、日本も欧米に追随して見直しの検討を始めた形だ。

 もともと会計の透明化を訴え、時価会計を先導してきた米国。日本も世界の流れに合わせ、国際会計基準に合わせ時価会計を導入してきたが、米証券大手リーマン・ブラザーズ破綻に端を発した世界経済の混乱により、その米国、そして欧州から時価会計の見直し検討が始まっている。

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