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2008年10月19日(日) 21時26分

インドが中国を警戒 パキスタンへの原子炉提供で産経新聞

 【シンガポール=宮野弘之】中国がパキスタンに対し、新たに2基の原子炉の提供を決めたことで隣接するインドは今後、両国が協力関係を深め、インドへの牽制(けんせい)を強めるのではないかと懸念している。両国の合意は原発以外にパキスタンの通信衛星打ち上げや中国からの投資拡大なども含め12項目に及ぶ。中国と親しかった故ブット首相の元夫のザルダリ大統領が就任したことも、中国がパキスタンでの影響力を強める懸念材料となっている。

 原発提供は、18日にパキスタンのクレシ外相が記者会見するまで、明らかにされていなかった。中部パンジャブ州チャシュマに新たに作る原発2基を中国が提供する。同地ではすでに2基の原発が中国の支援で作られ、新たな2基は電力不足を補う増設分という。

 ただ、パキスタンはインド同様、核拡散防止条約(NPT)に加盟しておらず、中国から原子力施設や技術協力を受ける場合、国際原子力機関(IAEA)との査察協定締結や原子力協力グループ(NSG)の承認が必要となる。既存の2基は中国が04年にNSGに加盟する前に作られた。これについて、クレシ外相は「国際的な責務は承知している」と述べたが、いつ手続きを行うのかなどはあいまいなままだった。

 首脳の共同声明では触れず、帰国後にパキスタンが発表したことについて、インドでは「大統領の訪中の主目的が、印米原子力協定と同等の中国との包括的原子力協定締結だったが、説得できなかったため」(タイムズ・オブ・インディア紙)とみている。

 しかし、これで中国がパキスタンへの原子力分野での協力をあきらめたわけではなさそうだ。米CBS放送は、イスラマバードの外交筋の見方として「中国は米印協定のような包括的な原子力協力協定は結ばず、原子炉1基ずつという形で協力を進めていく。米国同様、地域での長期的利益の確保を狙っている」などと伝えた。

 一方、パキスタンは政治不安に加え、世界的な金融危機の影響から、投資マネーの海外への流出が止まらず、外貨準備高は今月半ばに78億ドルを割り込み、輸入代金2カ月分程度の水準にまで落ち込んでいる。

 ただ、今回の中国訪問で、ザルダリ大統領は中国側に15億ドルから30億ドル規模の支援を要請したが、取り付けることはできなかったという。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081019-00000542-san-int