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2008年10月18日(土) 02時32分

<年金改ざん>組織ぐるみで不正 レセプト抜き取り毎日新聞

 厚生年金の不正な遡及(そきゅう)脱退は、公的医療保険の深刻な改ざんを伴っていた。遡及により無資格受診となった被保険者の診療報酬を政府管掌健康保険から肩代わりしていた社会保険事務所。社保事務所職員らの証言によると、一連の手続きは担当職員のみならず所長まで情報を共有し、隠ぺいのために社員からの保険証回収も意図的に怠っていたという。

 「無資格の受診をすべて隠ぺいした。肩代わりした医療費は事務所で月数十万円になることもあった」。西日本の社保事務所の元職員は証言する。保険料の徴収担当者が点検担当者に、診療報酬明細書(レセプト)を抜くよう指示。抜いたレセプトは徴収担当者が別管理し、徴収せずに放置していたため「ぼろぼろになったまま滞納処分票に挟まれていた」という。

 滞納処分票には本来、保険料を滞納する企業への指導経過が時系列で記されている。だが、遡及脱退処理して滞納保険料の圧縮などを行うと、徴収課の係長や課長、所長が処分票に押印して決裁した。元職員は「課員も所長もそれで情報を共有した」と話し、職員個人の不正ではなく、事務所ぐるみの隠ぺいと強調する。

 さらに、会社が年金の適用事業所から脱退する際、従業員から回収する保険証をあえて回収しないケースもあったという。社保事務所は通常、保険証を返却しない従業員に個別に脱退日を知らせ、回収を促す。だが、職員が社長に指導したり話し合って遡及脱退させた場合は「脱退日を知らせるとわざわざ社員に(不正を)知らせることになり、ヤブヘビになる。回収不能ということにして手続きを通した」と元職員は証言する。

 別の東京都内の元社保事務所幹部は「無資格受診を医療機関も本人も気づかない。こうした操作は一切を表に出さないためだった」と話した。【野倉恵】

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