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2008年10月18日(土) 02時30分

<海自格闘死亡>医官立ち会わず 教官も適性低い毎日新聞

 広島県江田島市にある海上自衛隊第1術科学校入校中の3等海曹(25)が15人を相手にした格闘訓練中に倒れて死亡した問題で、訓練当時は医官が立ち会っていなかったことが、海自呉地方総監部の事故調査委員会の調べでわかった。ほかにも「人的要因」として(1)立ち会い教官の格闘訓練の指導者としての適格性が低い(2)隊員は格闘経験が浅かった−−などの事実も判明。海自では安全管理に問題があったとみて、週明けにも中間報告を公表する。

 亡くなったのは海自の特殊部隊「特別警備隊」の養成課程にいた3等海曹(死亡後に2曹に昇進)。問題の訓練は9月9日午後、約3キロのランニング、2人1組の背負い登坂訓練をこなしたあと、午後4時45分から始まった。教官が2人立ち会った1対15の連続格闘訓練は、50秒組んで、交代時間が10秒というサイクルで行われた。

 調査委によると、3曹は2、3人目でふらふらになり、14人目であごに打撃を受けて尻もちをついた。別の学生らによって立たせられたが失神。この際、立ち会い教官は「酸欠か熱中症と判断した」という。しかし、病院に搬送され、約2週間後の25日に急性硬膜下血腫で死亡した。

 調査委が注目しているのは、危険を伴う特警隊の訓練で医官が立ち会っていなかった点。狭い場所での戦闘訓練や潜水訓練では通常、緊急事態に対応できるよう医官を立ち会わせている。また、指導に当たった教官(2等海曹)は剣道初段、少林寺拳法初段で、指導者の目安となる陸自の格闘技の課程も履修していなかった。

 さらに、3曹は初歩の格闘ができる程度で「結果論ではあるが、連続して15人の組み手に耐えられる技量を持っていたかは疑問」(海自幹部)という。

 3曹は同課程を辞退し、2日後に別の部隊に異動する予定だった。特警隊で10人以上を相手にする同様の連続格闘訓練が行われたのは今年5月と今回だけで、5月の際も異動直前の隊員が前歯を折るけがをしている。

 ◇脳外科搬送まで2時間

 一方、3曹が脳外科のある同県呉市の病院に運ばれるまでに約2時間かかったため、治療が遅れた可能性があることが分かった。

 関係者によると、3曹は学校側の「脳内出血ではない」との判断から、いったん脳外科のない江田島市の病院に運ばれ、午後6時ごろ治療を受けた。「打つ手がない」と呉市の病院に転送、到着したのは同7時すぎで、直接運ぶより1時間程度遅れた可能性がある。

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