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2008年10月18日(土) 22時17分

ウクライナ経済危機、政局混乱に拍車 IMF融資めぐり対立激化へ産経新聞

 【モスクワ=佐藤貴生】旧ソ連のウクライナを深刻な金融危機が直撃し、政局の混乱に拍車がかかりつつある。国際通貨基金(IMF)の緊急融資の受け入れをめぐり、ティモシェンコ首相とユシチェンコ大統領との対立が激化する気配をみせているためだ。

 IMFの専門家は16日、ウクライナの首都キエフで同国の金融当局者らと協議を始めた。協議は融資の条件などをめぐり10〜14日間続く見通しで、ユシチェンコ大統領は17日、「私は楽観主義者だ。機能的に対処すれば正しい答えが見つかるだろう」と述べ、融資の実現に期待を示した。

 同国では10月に130億ドル以上の預金が銀行から引き出されて信用不安が一気に拡大した。政府は業界6位の銀行を国有化したほか、他行にも公的資金を注入したが、好転する兆しは見えない。

 しかし、同国議会では繰り上げ総選挙をめぐり、大統領と首相とが経済政策そっちのけで政争を繰り広げている。連立政権を組んでいた大統領派と首相派は9月中旬に分裂、ユシチェンコ大統領は今月上旬、繰り上げ総選挙を12月7日に実施すると発表した。ティモシェンコ首相は「選挙には多額の予算がかかる」と強く反発し、大統領の決定を違法として裁判所に差し止めを求めた。

 さらに今回、首相は総選挙とIMFの融資条件とをからませ、「IMFの融資を受けるためには、繰り上げ総選挙の延期などの条件をクリアしなければならない」と発言。中央銀行幹部が否定に走る事態を招いた。IMFは融資と引き換えに経済政策の改善を求めるのが通例だが、IMFは融資条件については一切、コメントしておらず、大統領派などから「首相は政治的駆け引きにIMFの融資をからめようとしている」との批判が出る可能性がある。

 ウクライナでは2010年に大統領選も控えており、両者のつばぜり合いが激しさを増しつつある。かつては2004年に「オレンジ革命」を実現させた親欧米派同士だが、両者の政争が同国の経済環境の不安定化をさらに助長している形だ。

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