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2008年10月17日(金) 08時04分

マルチ商法問題 前田氏離党 小沢氏が“引導” 民主、火消しに躍起産経新聞

 民主党の前田雄吉衆院議員(比例代表東海ブロック)は16日、愛知県庁で記者会見し、自身が代表を務める政治団体がマルチ商法業者から講演料などを受け取っていた問題で、同党を離党し、次期衆院選に出馬しないことを正式表明した。与党は午前の参院予算委員会で民主党への反転攻勢に乗り出したのもつかの間、野田聖子消費者行政担当相が平成8年にマルチ業者を擁護する国会質問をしていたことが判明した。年内の解散・総選挙が現実味を増す中、自民、民主両党の攻防は泥仕合の様相を帯び始めた。

 「代表がしっかり認識され、本人も責任をとった。けじめをつけた」

 民主党の菅直人代表代行は16日午後の会見でこう述べ、前田氏によるマルチ商法問題の事態沈静化に期待感を示した。だが、総選挙を前に同党が被ったダメージは小さくない。

 小沢氏支持の若手議員グループ「一新会」の事務局長だった前田氏に引導を渡したのは、小沢一郎代表だった。会見嫌いで知られ、体調も万全ではないという小沢氏だが、問題の拡大を憂慮したのか、16日未明に党本部で急遽(きゅうきょ)会見を開く手際のよい動きを見せた。マルチ商法問題の火消しに躍起なのは明らかだった。

 会見で小沢氏はさばさばした口調で「少しでも早く結論をお伝えしたい。そういう思いでのことと、ご理解いただきたい」と切り出し、前田氏から自主的な離党と衆院選不出馬の申し出があったことを明らかにした。前田氏は16日午前の愛知県庁での会見後、離党届を提出し受理された。

 前田氏のマルチ商法問題が大きく報じられたのは13日。マルチ商法業者関連の政治団体「ネットワークビジネス推進連盟」の議員連盟(すでに解散)には、前田氏のほか藤井裕久最高顧問、山岡賢次国対委員長、石井一副代表ら小沢氏に近い議員が名を連ねていた。前田氏が注目されたのは、衆院予算委員会で業界寄りとされる質問を繰り返したからで、問題が長引けば他の議員への批判が強まるのは確実だった。

 目前に迫る衆院選への悪影響を最小限にしなければならない−。小沢氏は13日、前田氏に電話をかけ、マルチ商法業者からの講演料返金を指示した。前田氏は18年の自宅全焼で「関係資料を焼失していた」(同氏)が、14日夜に都内の小沢氏の個人事務所で2時間にわたって事情聴取された。

 「やましいところはありません」。潔白を訴える前田氏に小沢氏は(進退は)「お前が考えることだ」と語り、15日朝に連絡してくるよう求めた。事実上、離党か議員辞職を求めたものだった。「代表の意向はわかっている」と周辺にこぼしていた前田氏だが、15日午後の記者会見では離党も議員辞職もしないと言い切った。

 小沢氏は、約束の15日朝に連絡してこなかった前田氏に怒り、午後11時、衆院第一議員会館の自分の部屋に呼び出した。深夜、蛍光灯がこうこうと照りつける部屋を報道陣が会館の外側から遠巻きに見守った。小沢氏と前田氏は約30分間の問答で結論を出した。

 一夜明けた16日、民主党には前田氏離党を歓迎する空気が広がり、「野田聖子消費者行政担当相の話も出てよかった」と、マルチ商法問題の痛み分けを期待する声まで飛び出した。「食いついてきたな!なんちゃって」。民主党幹部は16日、この問題が与党の解散ムードを高めたと記者団に指摘されると、うれしそうに軽口をたたいた。

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