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2008年10月17日(金) 00時19分

現実味増す世界同時不況 大規模公的資金注入決めるも産経新聞

 【ワシントン=渡辺浩生】欧米政府が金融機関に大規模な公的資金注入を決めたにもかかわらず、世界の市場が再び恐怖に包まれている。15日の米株式市場は1987年10月以来の急落を記録し、アジアに飛び火した。金融危機の影響はすでに実体経済に及び、米国だけでなく世界同時不況が現実味を帯びてきた。

 「困難な数カ月がわれわれの前に控えているということを市場は認識している」。15日夜、CNBCテレビに出演したポールソン財務長官は、21年ぶりの株価急落の理由を問われてこう答えるしかなかった。

 先週末の先進7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)で承認された行動計画に基づき、米国が2500億ドルの資本注入を決めるなど欧米主要国が即座に公的資金注入計画を打ち出した。「手段はそろった。あとは実行だ」(ボルカー元連邦準備制度理事会議長)という期待も広がった。

 しかし、9月の米小売り高が予想以上の落ち込みを記録し、消費の鈍化を裏付けた。金融危機が実体経済の末端までむしばんでいる現実に、市場は再び動揺した。「米国のリセッション(景気後退)入りはほぼ確実」(米エコノミスト)で、実質国内総生産(GDP)伸び率は第4四半期からマイナス成長となるという観測が支配的になっている。

 加えて、バーナンキ連邦準備制度理事会(FRB)議長が講演で「広範囲な経済の回復はすぐには起きない」と述べ、信用の回復にはなお時間がかかるという厳しい見通しを示した。景気底割れを防ぐために本来、財政出動も検討される事態だが、大統領選を控えた政治空白期に入り、追加的な景気対策は1月の新政権発足まで期待できない。

 米株式市場は激しい乱高下が続いている。「空が落ちてくると恐れた人々が塹壕に殺到している」−。米紙ニューヨーク・タイムズは、恐怖に慌てる投資家の心理をこう表現している。そして今、世界同時不況がリアリティーを増していることに市場はおびえ始めているのだ。

 米国発の金融危機は、世界経済を牽引(けんいん)する中国やロシア、ブラジルなど新興国や途上国経済に悪影響を及ぼし始めた。1バレル=75ドルを割った原油価格は、世界経済が今後急速に冷え込むことを予測している。経済危機に見舞われたアイスランド、ハンガリー、ウクライナは国際通貨基金(IMF)に対して支援を要請している。

 主要8カ国(G8)首脳は15日の緊急声明で新興国、途上国も交えた緊急首脳会合の開催を呼びかけたが、市場を支配する恐怖の連鎖を断ち切るには、世界のリーダーシップの発揮による政策の総動員しか方法はない。

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