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2008年10月17日(金) 10時38分

企業情報を活用し“攻め”の経営に転じよ——ガートナー社長ITmediaエンタープライズ

 ITの飛躍的な発展が社会に大きな変革をもたらしていることは、改めて説明するまでもあるまい。ネットワークの発展に伴い企業活動もかつてないほどのグローバル化が進み、この大きなうねりを乗り越えるため企業はITの活用方法を模索し続けている。

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 アイティメディアは9月30日、経営者層に向けたセミナー「第6回 ITmedia エグゼクティブセミナー」を開催。基調講演に登壇したガートナー ジャパン代表取締役社長の日高信彦氏は、冒頭で情報革命のインパクトについて次のように強調した。

 「ITを活用することで業務をよりリアルタイムに把握したり効率化したりできる余地はまだまだ残されている。その点でいえば、情報革命はまだ緒についたばかりだ。もちろんITの利用にはリスクも伴う。だが、競争がこれほどグローバルに繰り広げられるようになったことで、ITの活用は生き残りを図るために不可欠となっているのだ」

●戦略的な価値の向上に伴い増え続けるIT予算

 ITが企業の命運を左右するほどの存在にまでなっていることは、ユーザー企業の意識にも顕著に表れている。同社が毎年CIO(最高情報責任者)に対して実施している調査によると、ITを利用する目的に「市場を上回る速度での成長を達成すること」を挙げた企業は2004年にはわずか15%だったものの、その割合は年々増加し2007年には63%にも達するほどだ。このことから、もはや企業にとってITは、単なる「効率化」だけでなく、品質、コスト、イノベーション面での改善を進める上で欠かせない存在となりつつあることを読み取ることができよう。

 このように、企業が競争力を強化するためにITの戦略的な価値がますます高まる一方、ITの予算額も増加している。グローバルの企業に対して実施した調査でも、IT予算の加重平均での増加率は2004年から2008年まで小幅ながら一貫して増え続け、2008年の増加率は2004年の2.5倍以上の3.3%にも上るほどだ。

 「サブプライムローン(信用力の低い個人向け住宅融資)問題などにより景気後退がささやかれている。だが、国内の大手ITベンダーにヒアリングしたところ需要に変化はみられなかった。これほどまで、企業にとってのITは欠かせない存在になっているということだ」(日高氏)

 企業へのITへの期待値がこれほどまで高まっている中で、CIOには「テクノロジ—」のみならず「ビジネスプロセス」や「情報」の管理にもリーダーシップを発揮すべきというのが日高氏の主張なのである。

●ITを“攻め”の経営に生かすグローバル企業

 今、ITを活用することで企業は何をすべきと考えているのか。日高氏によると、この点について日本企業とグローバル企業の間の明確な意識の差を見て取れるという。

 ITの活用を通じて期待する事項として、日本とグローバルの双方とも「ビジネスプロセスの改善」や「新商品/サービスの開発」などが共通して上位に挙げられたものの、以下、日本では「既存顧客との関係強化」が、グローバルでは「新規顧客の開拓」が続いた点で明確な違いが表れたという。

 また、IT戦略における優先事項として、日本では最上位であった「ITガバナンスの改善」がグローバルでは7位であったのに対し、グローバルで最上位の「ビジネスの成長を実現するプロジェクトの提供」は日本では4位となった。

 「日本ではITを“攻め”の武器に活用しようと考える傾向がグローバルほど強くない。これも、日本では総じてボトムアップ型でITの利用を慎重に推し進めることから、その活用がグローバルほど進んでいないことの表れにほかならない」(日高氏)

●BI、BAMの活用に向けBICCの設置を!

 一方で、日本、グローバルの双方で共通したのが、採用を優先するテクノロジーとしてBI(Business Intelligence)をトップに挙げた点だ。この理由として日高氏は、経営環境がますます厳しさを増す中で、企業内の情報を統合し、仮説検証の作業をより入念かつ短期間に行うことが競争を勝ち抜く上で極めて重要になっているためと分析。実際に、BIの活用範囲をビジネスプロセスの管理にまで広げ、BAM(Business Activity Monitoring)の活用にまでこぎつけることができれば、重要なビジネス指標を監視することで、オペレーション上のリスクの予知や、問題発生から対応策を実施するまでの時間を大幅に削減することも可能になる。ただし、その利用は一筋縄ではいかないという。

 「現在、多くの企業では部門単位にビジネスプロセスが最適化されている。だが、BIをビジネスプロセスの監視に活用するためには、全社最適なビジネスプロセスを新たに構築するとともに、そこで流れる経営情報がビジネスにどれほど影響を与えるのか見極めるため、KPI(Key Performance Indicator:業績評価指標)を基にBIで情報を分析できるよう、業務システムとBIとを連携させるといったはん雑な作業が求められる」(日高氏)

 とはいえ、BAMの利用にまでこぎつけることができれば、重要なビジネス指標をリアルタイムに把握でき、意思決定を多面的に活用することが可能だ。その実現に向け日高氏が企業に設置を強く求めたのが、BICC(BI Compitency Center:高度な情報分析をサポートする専門組織)だ。

 「BIやBAMの活用を推し進めるためには、ツールやアプリケーションのみならず、ビジネスや組織、さらにデータに対する深い知識が求められる。情報の活用スキルを高め、攻めの経営に生かすためには、知識の習得と分析ノウハウの蓄積を可能にするBICCが企業にとって欠かせない存在になるはずだ」(日高氏)

(ITmedia エグゼクティブ)

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