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2008年10月16日(木) 09時43分

三井住友銀行の新CRMシステム、住宅地図活用で訪問回数が倍増ITmediaエンタープライズ

 米国時間の10月14日、ネバダ州ラスベガスで開催中の「Teradata PARTNERS 2008」は2日目を迎え、三井住友銀行が住宅地図を活用した新しい営業支援システムの事例を紹介した。

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 今年で開催23回を数える歴史あるユーザーグループ主催のカンファレンスだ。200以上のセッションが用意されているが、そのうち約半数はユーザー企業によるもので、Teradata活用の技術やノウハウを共有するのが最大の狙いだ。日本からもコカ・コーラウエストや三井住友銀行が選ばれ、その先進事例を紹介している。

●個人業務の成長に欠かせない信頼関係構築

 三井住友フィナンシャルグループの中核企業である三井住友銀行は、ここ数年、個人業務部門の強化に力を注ぎ、成果を上げている。2007年度の業務利益は1693億円に上り、2001年の合併時と比較して5倍に伸び、全体の業務利益に占める割合も2割を超えた。

 「かつてはお荷物といわれたが、ここ数年は、商品と提供方法を見直し、顧客に選ばれる銀行となるべく、長期的なパートナーとしての関係構築に力を注いできたことで、大きく成長している」と話すのは、同行個人業務部マーケティング企画室情報システムグループのグループ長を務める葛原賢氏。

 支店から法人営業を分離、支店の事務作業も支店サービス部へ切り離し、支店は個人顧客へのセールスとコンサルティングに特化できる組織変更を行っている。その中でも重要な役割を果たすのが、地域に密着した「マネー・ライフ・パートナー」(MP)だ。

 MPは、30〜50歳代の主婦を派遣社員として採用し、新規顧客の開拓や既存顧客との信頼関係構築を担う。営業経験は不問で、専門知識よりも気さくな人柄が求められるという。訪問先のほとんどは、同じ主婦であり、彼女たちが心を許し、お金の話もしてくれなければならないからだ。

 「MPは担当エリアを持ち、主婦を訪問、その街で何が起こっているのかまでを把握しなければならない」(葛原氏)

 実際には支店の行員が販売を担うため、MPは一定資産以上の顧客を定期訪問したり、預金や債権が満期を迎えたことを知らせたり、大口の入金があったらお礼に行ったり、といったことが主な活動となる。

●地図で近隣顧客も把握

 今回のPARTNERSで紹介された同行の営業支援システム「MCIF MAP」は、彼女たちが地図を利用して担当するエリアを視覚的に理解し、近隣顧客も併せて訪問することで全体の訪問回数を高め、販売担当者への引き継ぎを増やすのが狙いだ。

 これまでにもCRMシステムから担当する顧客のリストと情報を引き出し、コピー機で地図を複写し、切り貼りしてエリア台帳を作成してきたが、手間が掛かるのはもちろん、定期的に異動も行われるため、次第に台帳の作成がおざなりになってしまったという。

 新しいMCIF MAPでは、TeradataをベースとしたCRMシステムで支店、ATM、コールセンター、インターネットバンキングの情報を統合、顧客宅の位置情報も付与し、デジタル地図情報システムに引き渡す。これにより、CRMと地図のスムーズな連携が図れ、効率の良い訪問計画が作成できる。

 例えば、こうだ。CRMで定期的に訪問すべき顧客をクリックすると住宅地図が表示される。縮尺を変えて近隣顧客の住宅も表示させ、「預金や債権が満期」を条件に指定すると該当する顧客の自宅にマークが付く。これをプリントアウトして、エリア台帳としてまとめていく、といった具合だ。これまでは1日10件程度の訪問だったMPが、20件程度まで増やすことができたという。

 また、新しい営業支援システムによって、「知らない顧客があった」「訪問に偏りがあった」といった多くの気づきもMPに生まれた。

 「家の形まで表示する住宅地図にこだわったのは、担当するエリアが面で簡単に理解できるようにしたかったから。現場の意見を吸い上げ、さらに活用できるシステムにしたい」と葛原氏は話す。

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