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2008年10月16日(木) 14時00分

「サムライの瞑想」やヨガを活用する米軍:「戦場での心的外傷」治療にWIRED VISION

Photo credit: AP

米軍の兵士に対して、瞑想してはどうか、などと助言したら、変人扱いか、悪くすればヒッピー呼ばわりされる危険があったのは、それほど昔のことではない。

ところが最近では、戦場でのストレスに対処し次の戦いに備えようとする陸軍や海兵隊の兵士たちにとって、瞑想というアドバイスはごく当たり前のものになりつつある。

ノースカロライナ州のキャンプ・ルジューン海兵隊基地では、昔のサムライの鍛錬法を参考にしたとされる『Warrior Mind Training』(軍人向け精神トレーニング)が、精神衛生上の問題を抱えた海兵隊員に提供されている。

インストラクターのSarah Ernst氏は、AP通信に対して次のように説明している。

「これは、思考を断ち切り、注意を鋭く集中させるための方法だ。いわば、兵士たちが実戦に出る前に筋肉を鍛えるようなもので、激しい戦闘の中で意識の集中を保つ精神力を獲得し、その一方で、戦地を離れるときは戦いの恐怖を忘れることができるようにする。われわれのモットーは、『戦いは敵に向け、戦闘は戦場に置いてくる』というものだ」

このトレーニング法は、カリフォルニア州のキャンプ・ペンドルトン海兵隊基地の海兵隊員や、ノースカロライナ州のフォート・ブラッグ陸軍基地の兵士、米海軍潜水艦基地の潜水艦乗組員にも指導されているという。

しかし、心的外傷後ストレス障害(PTSD)に苦しむ兵士たちに提供されている代替療法はこれだけではない。

ウォルター・リード陸軍病院では、PTSDの治療にヨガを取り入れている。上官レベルの軍人たちでさえ自らヨガを実践していることも報道されている。

また、米国防総省の国防高等研究計画庁(DARPA)では、天然成分由来のサプリメントの開発に数百万ドルの資金を投じているほか、陸軍は400万ドルを投じて代替療法に関する研究を行なっている。

『USA Today』紙の記事によると、採用を検討すべき療法として、「アートやダンスから、中国古来の治療法である気功、あるいはレイキと呼ばれる手当て療法」に至るまで、82件もの提案があげられているという。

これらの提案は現在、10件にまで絞り込まれている。それに基づいて今後、「瞑想がいかに精神の回復力を向上させるか」「動物を抱きしめたり、なでたりすることが、いかにPTSDの治療に効果を上げるか」「鍼治療が、爆破による軽度の脳損傷を原因とする頭痛をいかに緩和できるか」といった研究が行なわれる予定だという。

以下に、USA Today紙の記事から引用する。

昨年実施された調査によると、海軍兵士および海兵隊員の約3分の1は、薬用植物を使った治療を中心に、何らかの代替療法を利用しているという。

陸軍に関する最近の調査では、戦闘によるPTSDを患う兵士の4人に1人が、症状改善のために薬用植物、カイロプラクティック、鍼治療、ビタミンの大量投与などに頼っていることが判明している。

全く新しい世界が広がっているようだ。

[2005年の過去記事「戦場のPTSDをバーチャル・リアリティーで治療」では、VR装置で戦場をリアルに再現することでPTSDを治療しようとする米海軍研究局などの研究を紹介している]

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081016-00000002-wvn-sci