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2008年10月16日(木) 15時00分

日経平均1000円超急落、市場関係者は国内外の財政出動催促ロイター

 [東京 16日 ロイター] 世界的な株安の連鎖が再び東京市場を襲った。米株大幅安を受けた16日の東京株式市場は日経平均が1000円以上急落する大荒れの展開となった。
 市場が望んでいた米政府による金融機関への資本注入が発表され、世界の株式市場はいったん持ち直すかにみえた。しかし、相次ぐ経済指標の悪化などで実体経済の落ち込みが鮮明になり、不安心理が再燃している。
 市場関係者の多くは、焦点が金融問題から景気後退に移ったと指摘。株価底入れの条件として、国内外の政府による財政出動を上げている。東洋証券シニアストラテジストの児玉克彦氏は「不安を払しょくするには強力な景気対策が必要。それも各国が協調して行うことが重要だ」という。新生証券市場商品開発部部長の作本覚氏は「日本も財政改革は一時棚上げして緊急避難的にリニアモーターカーの建設など公共投資による内需テコ入れに踏み切るべきだ」と話している。
 株式関係者のコメントは以下の通り(順不同)。
 <大和証券投資情報部長 多田羅信氏>
 米経済指標が驚くほど悪化したわけではないが、海外勢中心に換金売りが続いており、ちょっとした材料でも下げのきっかけになりやすい状況だ。景気悪化の度合いが見えず、株式市場はどこまで織り込めば良いか計りかねている。
 しかし、金融危機に歯止めがかからなかった前週ほどの不安心理はない。東証1部全銘柄のPBRが1倍を割り込む日経平均8000円の水準では、余裕資金が流入することも実証済みだ。米新政権が決まる11月には、新大統領によるリップサービスも予想され、減税など財政出動への期待感から株価は落ち着くとみている。安値圏では個人の買いが増えると想定し、花王<4452.T>、NTTドコモ<9437.T>など知名度の高いディフェンシブ銘柄や割安株、さらにトヨタ自動車<7203.T>など日本を代表する銘柄が有望とみている。
 <新生証券市場商品開発部部長 作本覚氏>
 現金化に追われる海外投資家は、運用資産のうち証券化商品や社債など流動性の枯渇したものは売るに売れず、株式など流動性の保たれている資産に売りを集中させている。不安心理が売りを呼び、それがさらに不安心理を増幅する悪循環になっている。ここまで傷口が広がると米当局が「あらゆる手段をとり続ける」といっても信頼に結びつかない。米政府による株式の買い取りなど思い切った対策が必要になってくるのではないか。日本も、財政改革は一時棚上げして緊急避難的にリニアモーターカーの建設など公共投資による内需テコ入れに踏み切るべきだ。
 <インベストラスト代表取締役 福永博之氏>
 金融危機には手を打ったものの、実体経済の悪化がどこまで悪化するのか、あるいは長期化するのかが読めず、戻ったところでは戻り売りが先行してしまう。米インテル<INTC.
O>の決算が象徴的で、足元業績は予想以上だったが先行きへの見方が慎重だった。日本株は、PER1ケタ、PBR1倍前後が頻発しており、バリュエーションからいえばすでに株価は相当な減益を織り込んでいるが、リセッションが長期化するとの見方が強まれば市場の懸念は減益リスクから赤字リスクをにらむ形になりかねない。日経平均の下値のメドはバブル後安値の7603円に置いているが、その場合にはこの水準が危うくなる可能性もある。
 <エース証券専務 子幡健二氏>
 先週までの下落と、今回の下げは本質的に違う。株価が織り込む対象は金融恐慌から経済恐慌に転じてきた。背景にあるのは、米国の政策当局者に対する不信感が大きい。そうした中、相場下げ止まりの条件として必要なのは米国をはじめ各国の景気対策だ。とくに米国は名目GDPが、60年代以降で経験していない2四半期連続のマイナスとなる可能性もあるほど状況は深刻で、現在考えられているような額では足りない。財政議論を考えない強力な景気対策を打ち出す必要がある。
 相場が反転した場合は、欧米に比べて金融問題の影響が限定的な銀行・証券株や内需関連株、業種別では小売株が注目できる。トヨタ自動車<7203.T>やソニー<6758.T>など日本を代表する国際優良株は、世界的な景気低迷の影響を受けることを考慮し、売られ過ぎの反動高を狙う短期値幅取りか1年以上の長期投資で狙うべきで、中途半端な投資期間の投資は避けたい。
 <東洋証券シニアストラテジスト 児玉克彦氏>
 マーケットの視点は、金融問題から景気後退に移った。米国景気のリセッション、そこからくる世界的な景気低迷を本格的に織り込んだと言えよう。かなりの部分は株価に織り込んだと見られるが、市場は景気対策を待っており、その催促相場が繰り広げられる可能性もある。不安を払しょくするには、強力な景気対策が必要だ。それも各国が協調して行うことが重要だろう。各国が財政出動を行い、内需拡大策を積み上げる形にすることで株価は回復に向かうと考えられる。相場が反転した場合、物色対象として輸出関連株は厳しい。内需関連株が戻りのリード役になるのではないか。
 <大和投信投資顧問チーフストラテジスト 門司総一郎氏>
 株価下落の背景は、1)景気悪化、2)金融問題、3)ヘッジファンドや投信の解約に伴う株式からの世界的なマネーの引き揚げ。足元では、金融問題よりも景気がクローズアップされているようだ。株価反発を促すような政策は、正直見当たらない。利下げはやりつくした感があり、そもそも利下げが株価下落の歯止めになるかはわからない。ただ、自律反発のタイミングは必ず来る。その際は、売られ過ぎてきた商社や鉄鋼、機械などが物色されるとみている。
 <三井住友銀行市場営業推進部 チーフストラテジスト 宇野大介氏>
 市場はある意味、冷静で、米政府による公的資金注入の決定を過大評価していなかったということではないか。短期筋は資金注入を受けて金融不安がボトムアウトしたとの思惑からショートカバーを加速させたが、米金融安定化策での注入可能な公的資金規模は7500億ドルだが、実際の金融市場での損失額などは2ケタ違うといわれている。金融問題は解決していない。
 米国政府に関していえば、公的資金の注入規模拡大、景気対策、量的緩和を含めた金融政策と3つ揃った対策を実施することが必要になってくるとみる。
 <みずほインベスターズ証券エクイティ部長 稲泉雄朗氏>
 海外要因に振らされている相場だが、足元の注文件数は前週比で5割増と変化の兆しがみられる。底値圏とみた個人投資家が動き出しているためだ。たしかに足元の収益環境は厳しいが、技術力や資産(解散価値)など企業本来の実力からみて明らかに売られすぎている銘柄も多い。原油安のメリットを受ける紙パルプ、空運、化学などのセクターに反発余地があるとみている。政府には内需を活性化する刺激策を求めたい。
 <いちよし投資顧問チーフファンドマネージャー 秋野充成氏>
 リスクを取りたい投資家がいなくなっている。日経平均は2003年安値の7600円を下回り、7500円もある得るとみている。しかし、企業業績についてはすでに30%減益を織り込んでいる。思ったより良い業績が出れば、売る理由はなくなる。反騰局面での物色方向はリータンリバサルになる。建設機械・海運などの景気敏感株だ。 
 (ロイター日本語ニュース 金融マーケットチーム)

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