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2008年10月16日(木) 17時39分

2009年の注目テクノロジー・ベスト10、1位は「仮想化」Computerworld.jp

 IT市場調査会社の米国Gartnerはこのほど、同社が注目する2009年の戦略的テクノロジーとして仮想化を1位に挙げた。理由は、単にサーバの仮想化にとどまらず、サーバ以外にもデータ・センター内のほとんどのシステムを仮想化できるようになりつつあるためだ。

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 同社がまとめた2009年版のリストは米国カリフォルニア州オーランドで開催中の年次コンファレンス「Gartner Symposium/ITxpo 2008」(10 月12日〜16日開催)で発表された。大半は昨年のリストにもランクインしているが、Gartnerは各テクノロジーがその後どれだけ進化したかを調べ、顧客や調査部門のフィードバックを加味してランキングを調整した。「リストに掲載したテクノロジーは、どれも皆さんの環境や市場に何かしら破壊的な影響を及ぼす可能性がある」とGartnerのアナリスト、デビッド・シアリー(David Cearley)氏は語った。

 Gartnerの2009年版リストは次のとおり。

■1. 仮想化<昨年5位>

 Gartnerは経済がIT支出に及ぼす影響を予測した際、仮想化を“必須テクノロジー”の上位にランクさせた。だが、戦略的テクノロジーのリストを作成するにあたっては、万能ナイフのように、サーバ以外にも適用できる複数の特徴を兼ね備えていることが条件だった。

  Gartnerのアナリスト、カール・クランチ(Carl Claunch)氏は、「例えばストレージの場合、仮想化によりユーザーは種類や世代の異なるストレージ技術を組み合わせて使える。競争入札を通してストレージ技術を自由にミックス&マッチできるのだ」と説明した。

■2. クラウド・コンピューティング<初登場>

 「もしテクノロジーのハイプ(誇大宣伝)リストがあったなら、クラウド・コンピューティングがまちがいなくトップにきたはずだ」とシアリー氏は皮肉った。「最近は猫もしゃくしもクラウド・コンピューティングを口にしている」という同氏の言葉に、会場では笑い声が漏れた。

 とはいえ、Gartnerはクラウド・コンピューティングを「SaaS(Software as a Service)」のプラットフォームとしてだけでなく、コンピューティングとストレージ・インフラストラクチャのプロバイダーとして、また情報とビジネス・プロセスのプラットフォームとして、業界の地図を大きく塗り替える役割を果たすと見ている。

■3. コンピューティング・ファブリック<昨年8位>

 サーバ・テクノロジーは、メモリや I/O、プロセッサなど、必要な物理リソースを購入し、それらを組み合わせてリソース・プールを構築できる時代へと進化しつつある。コンピューティング・ファブリックとは、「必要に応じてリソースを組み合わせることだ」と、クランチ氏は説明した。このモデルでは、IT部門は大/中/小型サーバのプールをそれぞれ別々に用意しなくて済むかもしれない。「ブレード・サーバにもメモリとプロセッサを移す機能はあるが、シャーシ内のコンポーネントに限られる」(同氏)

■4. Web志向アーキテクチャ(WOA)<初登場。だが昨年7位の「Webプラットフォーム」に類似>

 昨年、GartnerはWebがどのようにしてサービス提供のモデルとなるかを説いた。同社は今年、アーキテクチャの視点に立ち、Webモデルがいかに SOA(サービス指向アーキテクチャ)に影響を与えるかを分析した。このアーキテクチャは、「Web-Oriented Architecture」という名前からわかるとおり、Web標準規格、識別子、フォーマット、プロトコルを使う。

■5. エンタープライズ・マッシュアップ<昨年6位>

 マッシュアップはもともと音楽業界で「リミックス」を意味する言葉だが、企業にとっても重要なビジネス・ツールになりつつある。マッシュアップにより、ユーザーは公開APIを用いて複数のサービスと機能を素早く組み合わせることができる。また、企業ユーザーはコンテンツ・アグリゲーション・ツールを使うことで、社内外のデータを柔軟に組み合わせることが可能だ。

■6. 専用システム<初登場>

 代表的な例は米国Ciscoのルータだろう。ほかにも、Javaやデータ・ウェアハウジング、その他のプロセス用として専用アプライアンスがある。「専用システムによりコスト節約が期待でき、新たなトレンドとして広く普及する可能性を秘めている」(クランチ氏)

■7. ソーシャル・ソフトウェアとソーシャル・ネットワーキング<昨年10位>

 「これらのツールを使うことで、組織全体でダイナミックに業務を遂行できる」(クランチ氏)

■8. ユニファイド・コミュニケーション(UC)<昨年2位>

 Gartnerは、UCの普及拡大により、今後5年間で「通信事業者の数が少なくとも半減する」と予測している。

■9. ビジネス・インテリジェンス(BI)<初登場>

 BIは企業にとって決して真新しいテクノロジーではないが、コンピュータの処理能力の向上により、BIアナリティクスをビジネス・プロセスに直接適用するなど、BIの機能をいっそう拡大できるようになりつつある。

■10. グリーンIT<昨年1位>

 グリーンITはすでに戦略的テクノロジーとして浸透しており、その重要性が低下したわけではない。IT部門にとって、「グリーン」とは電気代の節約や燃料消費量の削減につながるあらゆる対策の総称だ。

 コンファレンスに参加した某保険会社のアプリケーション担当バイスプレジデント、ジョン・ラヨーク(John Layok)氏は、「Gartnerのリストに掲載されている10のテクノロジーにはすべて賛成だ。なかでもわれわれが特に重視しているのはBIだ。BI はコンセプトこそ単純だが実行に移すのはきわめて難しい。だが、アナリティクスをビジネス・プロセスに取り込むことはわれわれにとって急務だ」とコメントした。

(Patrick Thibodeau/Computerworld米国版)

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