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2008年10月15日(水) 20時55分

断るとピザ70人前を注文 マンション販売の悪質手口急増J-CASTニュース

 マンション購入の勧誘で、脅されたり嫌がらせをされたりするケースが増えている。不動産不況による在庫増が背景にあり、5年前より倍増して全国で3000件近くの相談があるという。嫌がらせもエスカレートしているようだ。

■「家に火をつける。乗り込んでいくぞ」

 神奈川県内の30歳代男性には、業者からワンルームマンションの購入を勧める電話が頻繁にかかってきた。それも職場に直接だ。執拗なので、上司に代わって断ってもらうこともあったと明かす。

 2008年2月のある日も、業者から勧誘電話があり、強い口調で断った。しかし、直後に宅配ピザ店からかかってきた電話には仰天した。

  「70人前の注文がありました。作ってよいですか」

 ピザ店もさすがに、これだけの大量注文に戸惑ったらしい。この電話でとんだ災難を逃れたものの、その後もしつこい勧誘に悩んでいる。

 国民生活センターによると、このような悪質な勧誘が最近増えている。07年度は、5年前の倍近い2838件もの相談が寄せられた。ほかには、購入を断ると暴力団風の口調で「家に火をつける。乗り込んでいくぞ」と脅されたり、1日13時間も説明に拘束されたうえ、断ると胸ぐらをつかまれたりしたというケースがある。

 もっとも、悪質な勧誘は、バブル崩壊後から見られ始めた。それが、99年度には約500件、03年度には約1500件と次第に増え続けているのだ。なぜ止められないのか。

 確かに、脅しや長時間電話は、1996年の宅建業法の通達で禁止され、その後、施行規則になっている。ところが、特商法とは違って、購入しないと断った後の再勧誘を禁止していないので、しつこい営業を防げられない。また、業者名や人名、販売目的を言わなくも勧誘できるので、名乗らなかったり年金の話と言ってきたりする例も多い。

 さらに、法規制のネックなのが、販売代行業者の増加だ。国土交通省では、「営業を外部委託されると正直やりにくい。違反行為の証拠を積み上げられない歯がゆさはある」(不動産業課)と認める。これまでに、違反で行政処分されたマンション販売業者はないという。

■「『失礼な対応だ』と、あんたの会社の人事か総務に言うぞ」

 悪質勧誘によるマンション購入は、国民生活センターの相談では、平均が約2400万円。これだけ高額な物件にもかかわらず、購入後の相談が1割も占めている。脅されたからといって、大金を出すまでする人がなぜいるのか。

 そこには、「逆ギレ商法」と呼ばれる巧みな営業がある。買わない場合、次のような殺し文句で脅すというのだ。

  「こんなに説明して分からないなんて、頭が悪い。人間じゃない」

  「社会人としてどうなんだ。『失礼な対応だ』と、あんたの会社の人事か総務に言うぞ」

 また、マンションに投資すれば、家賃収入などによる利殖ができるとうたい、購入を迫るケースも多いようだ。

 東京経済大の村千鶴子教授(消費者法)は、こう指摘する。

  「数千万円もするマンションを、セールスされて買うものだとは思えません。電話や訪問による勧誘について日本では自由ですが、それを認めるのは非常に問題だと思っています」

 最近は、村教授の研究室にも毎日のように業者から勧誘の電話がかかってくるという。「自宅にも夜遅くかかってくるので、うんざりしています。ヤミ金融並みにひどいですね」

 そのうえで、村教授はこう言う。

  「金融危機を招いたアメリカのサブプライム問題も、悪質な勧誘を放置していたツケが出ている面があります。日本は、その後を追いかけているようにも感じますね」


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