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2008年10月14日(火) 12時03分

eBayが5ペタバイトのDWH構築、Teradataユーザー会で各社が「知識」を共有ITmediaエンタープライズ

 「Teradata PARTNERS 2008」は米国時間の10月13日早朝、「Enterprise Intelligence Awards」の授与式で幕を開けた。PARTNERSがユーザーグループ主催のカンファレンスであることを印象づける幕開けだ。未曾有の金融危機が世界経済に暗い陰を落としていることもあってか、カジノのディーラーも暇をもてあましているが、3000人を超えるTeradataのユーザーらがネバダ州ラスベガスのマンダレイ・ベイ・ホテルに集まった。

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 PARTNERSは、今年で何と23回目を数える。1979年、ロサンゼルス有数のヨットハーバーで知られるマリーナ・デル・レイのガレージから産声を上げたTeradataは、データベースの処理に特化した専用のコンピュータを開発、1983年に最初の顧客であるWells Fargo Bankにβバージョンを納入している。そのわずか3年後からPARTNERSが始まり、Teradataは常にユーザーの声に耳を傾け、エンタープライズデータウェアハウスの市場をリードしてきた。

 この日、優れたビジネスインテリジェンスとアナリティクス(分析)の事例を対象にしたアワード、「Excellence in BI and Analytics」に選ばれたのは、オンラインリテーラー最大手のeBayだ。同社は、Teradataを基盤とし、5ペタバイトという世界最大規模のエンタープライズデータウェアハウスを構築、社内の50以上の部門に「サービス」として分析機能を提供し始めた。同社でアーキテクチャーとオペレーションを担当するシニアディレクターのオリバー・ラッツェスバーガー氏は、「トップから末端に至るまで、分析こそがわれわれのDNAだ」と話す。部門ごとにばらばらにデータ分析システムを構築するよりも運用コストが節約できるという。同社の事例は、2日目のセッションで詳しく紹介される予定だ。

 今年のPARTNERSでは、200以上のセッションが用意されているが、そのうち約半数はeBayのようなユーザー企業によるものだ。日本からもコカ・コーラウエストや三井住友銀行が選ばれ、その先進事例を紹介する。

●Beyond Intelligence

 午前に行われたオープニングセッションの主役も、PARTNERS運営委員会のトビー・ザッピ委員長だ。彼女は、保険・金融サービス大手のNationwideでデータベース管理者やデータモデラーらを統括するマネジャーを務めている。

 「情報は英知となり、次の打つ手を変え、組織の競争優位性確立につながった。将来に向けてさらなる無限の可能性を感じる」とザッピ氏。彼女が掲げた今年のテーマは、「Beyond Intelligence」だ。

 ザッピ氏からステージに招き上げられたマイク・コーラーCEOの持ち時間はわずかだったが、同社の方向性や新製品を紹介するには十分だった。

 「昨年、NCRから独立し、どの分野に幾ら投資するのか、Teradataの運命を自ら決められるようになった」とコーラー氏。

 同社の強みは、フォーチュン500の45%が採用する、コアのデータウェアハウス技術だけではない。情報のビジネス的な価値まで理解したコンサルティングサービスや、エンタープライズデータウェアハウスのすそ野を拡大するアプライアンスにもコーラー氏は積極的な投資を行っていくとする。

 「10テラバイトのデータを格納すればデータウェアハウスか? エンタープライズレベルのインテリジェンスがなければ、企業の成長を後押しできない。それができるのはTeradataだけだ」とコーラー氏は話す。

●Oracleが比較したのはTeradataの「入門用」?

 1999年、同社は「アクティブ・データウェアハウス」を掲げ、戦略的な分析と現場のユーザーの日常業務を支援するインテリジェンスを併せて提供できるプラットフォームの必要性を訴え、ソリューションの拡充を図ってきた。全社で単一のデータウェアハウスが構築できれば、データの一貫性を保てるだけでなく、データの移動やばらばらに分析システムを構築する必要もなく、多くの手間とコストを削減できるからだ。

 今春からは、最上位の「Teradata Active Enterprise Data Warehouse 5550」以外に、「アプライアンス」のネーミングを導入し、すそ野を広げるために種まきも始めた。入門用の「Data Warehouse Appliance 2550」や、開発およびデータマート用の「Data Mart Appliance 551」がそれで、Teradataでは、「Purpose-Built」(専用)プラットフォームファミリーと呼んでいる。

 Oracleが9月下旬に同社初となるハードウェア製品、「HP Oracle Database Machine」を発表したばかりだが、ラリー・エリソンCEO自らOracle OpenWorldカンファレンスのキーノートで比較したTeradataの製品は、この「入門用」の2550に過ぎなかった。

●巨大データウェアハウスも安価に

 PARTNERS 2008では、この専用プラットフォームに「Extreme Data Appliance 1550」が新たに追加された。比較的小規模なユーザーが大量のデータを分析する目的に適したもので、大容量のディスクを採用することで比較的安価に131ペタまでスケールさせることができる。Webサイトのクリックストリームデータや、法律で一定期間の保存が求められているデータ、RFIDなどのセンサーが生み出すデータのように、多くのユーザーが頻繁に活用するものではないが、膨大な量になってしまうデータの分析に適しているという。1550は、比較的小規模のユーザーが大量のデータを分析することを想定しているため、コストも抑えることができ、テラバイト当たり1万6500ドルから導入できる。

●ストレージをスマートに、地空間データもサポート

 またTeradataはこの日、同社ソリューションの核であるデータベースの新バージョン「Teradata 13.0」も発表している。75の新しい機能が盛り込まれ、30%もの性能向上を実現しているが、目玉は「Teradata Virtual Storage」と呼ばれる機能だろう。データはそのライフサイクルの中で利用される頻度も変わる。使い勝手の点からすれば、データが多くのユーザーから頻繁にアクセスされているあいだは、高速なディスクに置き、しだいに頻度が落ちてきたら安価なディスクに移動するのが理想だが、Teradata 13.0ではこれを自動化している。

 コーラー氏に続いてオープニングセッションに登場したCTOのスティーブン・ブロブスト氏は、「競争は歓迎すべきだ。データウェアハウス市場が活性化し、イノベーションが生まれる」と話した。

 ジオスペイシャル(地空間)データの格納と処理も新バージョンからサポートされている。既に触れたRFIDとGPSが組み合わされば、例えば、顧客が特売品を買いにやってきた距離などもつかめるようになるはずだ。

 「われわれも独立したことで研究開発を加速できる。2番手になるつもりはない」とブロブスト氏は追撃する新興ベンダーやOracleをかわす。

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