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2008年10月14日(火) 10時10分

神田商店街に地デジの電子看板 地域活性の切り札にITmediaエンタープライズ

 スーパーマーケット、公共施設、アトラクションなどでデジタルサイネージ(電子看板)の利用が広がりつつある。その場所にいる人が欲しいと想定される情報をリアルタイムに配信することで、購買など顧客の行動につなげることができるからだ。

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 デジタルサイネージの多くは、ネットワーク経由で動画や音声を配信し、ディスプレイに表示する。通常は、ネットワークを引ける場所にしか端末を設置できず、設置した場合は回線の敷設コストがかさむ。そのため導入に対して後手にまわる企業も少なくない。

 こうした課題を解決するサービスの開発を進めているのが、デジタルサイネージ事業を手掛けるストリートメディアだ。インデックスホールディングスで取締役を務めた大森洋三氏が旗振り役となり、今年4月に設立された。

 同社は、地上デジタル放送(地デジ)の放送波を受信し、それを店舗や街頭で流すデジタルサイネージの実証実験を11月末に開始する。舞台となるのは、東京都千代田区神田地域の商店街。2009年3月末までに最大100台を設置する予定だ。

 「地デジの放送波を受信できる場所に置いた端末が、自律的にコンテンツを保存する仕組みだ。専用のネットワークは不要で、運営のコストを抑えられる」。同社の八田斉明取締役は新サービスに自信をのぞかせる。

 放送と通信の融合の事例、そしてデジタルサイネージ普及の火付け役として、注目を集めそうだ。

●地デジのコンテンツを自律的に蓄えるデジタルサイネージ

 実証実験では、非接触ICカード技術「FeliCa」を搭載した15〜24インチの端末「Touch!ビジョン」と、東京メトロポリタンテレビジョン(TOKYO MX)で放映する番組のコンテンツを使う。

 ストリートメディアが、TOKYO MXの放送枠を購入し、独自に制作した商店街などを紹介する番組を放映する。Touch!ビジョンは、放送波中の放送言語を通信言語に変換する独自のブラウザを搭載しており、Touch!ビジョンを設置した商店街や店舗、商品に関連するコンテンツを再生する。

 放送波が受信できる場所に端末をおくと、Touch!ビジョンに映し出すコンテンツを自律的に蓄積し、指定した時間に応じてコンテンツを配信できる。コンテンツに連動したクーポンやホームページのURLなどのFeliCa情報は、再生されるコンテンツと連動して変わる仕組みだ。

 端末で取り扱うコンテンツは、主に神田の商店街の店舗や飲食店のメニューを紹介するものになるという。「おみくじやクーポンなどとも連動させたり、ニュースや天気予報なども流す」(八田氏)など、ユーザーの目視を誘い、店に足を運んでもらうような仕掛けも検討している。

 年内に30台、2009年3月までに最大100台のTouch!ビジョンを設置し、店舗への誘導や視認効果などの検証を進めていく。

●回線いらずでデジタルサイネージ普及の足かせを払しょく

 通常のような、ネットワーク経由でコンテンツを再生するデジタルサイネージは、設置台数が増えると設備や配線の設置コストも膨れあがる。

 「10台設置したら回線コストは10倍になる。運営費の増加に伴い、広告費も上がるといった負のスパイラルが起きる」。八田氏はこのコスト構造が、デジタルサイネージ普及の足かせになっていると指摘する。

 同社が検証している仕組みは、コンテンツを配信する光ファイバーなどの回線を必要としない。運営に掛かるコストは「従来のデジタルサイネージの半分程度」(八田氏)に抑えられる。

 実証実験で得られた知見を生かし、2009年をめどに商用化にこぎ着ける。「(コストが抑えられるとして)既に7、8件の引き合いがある」(ストリートメディアの谷浩志取締役)など、顧客の期待も高まりつつある。同社は3年後に40億円の売り上げを掲げており、滑り出しは上々のようだ。

 同実証実験は、経済産業省の「平成20年度中小商業活力向上事業の第二次公募」にも採択された。

 商品が売れず相次いで閉鎖した店舗が立ち並ぶ「シャッター商店街」が現れるなど、集客に弱点を持つ店舗は少なくない。今回の実証実験が商用化すれば、店舗は訴求力の高いコンテンツを配信できるデジタルサイネージを低コストで導入できるようになる。

 今後の課題は「デジタルサイネージという新たな業態をいかにして認知してもらうか」(八田氏)にある。谷氏は「日本初の試みとして、まちづくりや店作りの指針となるように実証実験を成功させる」と力を込める。

 地デジとデジタルサイネージの緊密な連携が店舗と顧客の間に橋を架け、地域の活性化させる切り札として浮上してくるかもしれない。

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